2018 Fiscal Year Annual Research Report
新しいスイッチング機構に基づく高精度蛍光イメージングプローブの開発
Project Area | Resonance Biology for Innovative Bioimaging |
Project/Area Number |
15H05951
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神谷 真子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90596462)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / 超解像イメージング / 光機能性分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.自発的光明滅を示す超解像イメージングプローブの開発 所属する研究室において確立した計算化学によるpKcycl(蛍光性フォームと無蛍光性フォームの割合の指標)予測法に基づき、561 nmで励起可能な新たな自発的光明滅プローブの設計開発に取り組んだ。まず計算結果から、分子内求核基としてヒドロキシメチル基、蛍光母核としてカルボローダミン骨格を有する誘導体HMCR550を有望な化合物として選定し、次にHMCR550を合成してその特性を評価した。その結果、HMCR550は計算値に近いpKcycl値を示し、生理的pHにおいてその殆どが無蛍光性状態で存在することを確認した。また、過渡吸収測定法により開環体の寿命を測定した結果、超解像イメージングに適切な寿命を示すことが明らかとなった。 また、前年度までに開発した細胞内求核分子と蛍光団との分子間求核付加反応を光明滅原理とした蛍光色素(SiP650, CP550)にタグ蛋白質の基質部位を導入し、生細胞における微小管の超解像イメージングを試みた。その結果、生細胞内の微小管のラベル化が可能であり、添加剤や強い光照射なしに蛍光明滅を示すこと、高い空間分解能で微小管を可視化できることを示した。さらに、CP550誘導体と以前開発した自発的明滅赤色蛍光色素HMSiR誘導体を併用することで、生細胞における微小管とミトコンドリアの2色超解像イメージングにも成功した。 2.ストレス関連光機能性分子の創製 一部の癌などで発現が亢進しているアミノペプチダーゼとの反応により蛍光性と細胞内滞留性が回復する蛍光プローブの開発に取り組んだ。具体的には、アザキノンメチド化学に基づき、アミノペプチダーゼとの反応により蛍光性と細胞内滞留性が回復する候補化合物を開発した。本プローブは十分な細胞内滞留性を示さないことが明らかとなったが、今後の分子設計の指針となる重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子内スピロ環化平衡や分子間求核付加反応を蛍光明滅原理として、561 nmで励起可能な新たな自発的光明滅プローブを2種開発することに成功した。これらのプローブは以前開発した自発的明滅赤色蛍光色素HMSiR誘導体との併用が可能であり、今後複数の細胞内構造を同時かつライブで超解像イメージングするために有用な色素となると期待される。また、計算化学により、蛍光性フォーム・無蛍光性フォームの割合を予測することが可能となったため、自発的光明滅プローブに適した蛍光骨格を効率よく設計・開発するこが可能となった。本手法は、超解像イメージングプローブのみならず、酵素活性を検出する蛍光プローブ開発等にも適用可能であり、今後さらに多機能化した蛍光プローブ群の開発にあたり活用できると期待される。 ストレス関連光機能性分子としては、これまでに開発したグリコシダーゼとの反応により光増感能と細胞内滞留性が回復するactivatable光増感剤の機能拡張を目指し、異なる酵素活性により蛍光性と細胞内滞留性が回復する蛍光プローブの開発を目指した。具体的には、一部の癌での発現亢進が報告されているアミノペプチダーゼを標的酵素とし、これらの酵素を発現する細胞を一細胞レベルで染色可能なプローブの開発を目指した。その結果、アザキノンメチド化学に基づく設計では十分な細胞内滞留性が得られないことが明らかとなったが、新たな分子設計の指針となる知見が得られ、今後に繋がる結果となった。 これらの成果は当初目標としていた計画に沿った成果であったため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.自発的な光明滅を繰り返す超解像イメージングプローブの開発 これまでに開発した561 nmで励起可能な自発的光明滅プローブHMCR550の生細胞応用を目指し、HMCR550にタグ蛋白質の基質部位を導入した誘導体を合成し、標的蛋白の特異的なラベル化が可能か、またその細胞膜透過性について評価する。さらに、タグ蛋白質の基質部位の導入位置の違いによりラベル化効率が変化するかも併せて検討する。さらに、HMCR550にケージド基を導入することで、光照射により蛍光性フォームと無蛍光性フォームの割合を調整可能な新たな色素の開発にも取り組む。 2.ストレス関連光機能性分子の創製 アミノペプチダーゼとの反応により蛍光性と細胞内滞留性が回復するプローブを開発するべく、キノンメチド化学と自己分解性リンカーを用いた新たな分子設計に基づき、候補化合物の開発と評価を行う。 また、以前開発したグルタチオン濃度変動を可逆的かつ定量的に測定可能なプローブに構造修飾を施すことで、細胞内局在が異なる誘導体の開発と評価を行う。
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Research Products
(29 results)