2017 Fiscal Year Annual Research Report
植物の自律分散型情報ネットワークを支える維管束シグナル伝達の解析
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
15H05958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 裕穂 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10165293)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 植物生理 / 発生・分化 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物にも個体全体を統合する情報ネットワークが存在すると考えられるが、その実体はほとんど明らかになっていない。本研究では、CLEペプチドシグナルの局所的なシグナル伝達と長距離シグナル伝達の解析、環境応答のシグナルとしての役割を解析している。本年度は次の3課題を研究した。
1.CLE1-CLE7ペプチドの機能解析: CLE1-CLE7遺伝子の欠損変異体を収集し、これら変異体を用いて、植物の成長、維管束形成、環境応答、シグナル伝達に対する影響を解析した。また、エストロジェン誘導体を用い、根及び地上部での遺伝子発現の変化をマイクロアレイで解析した。その結果、CLE1-CLE7ペプチドは、環境ストレス、特に乾燥ストレスと密接な関連を持つことが明らかとなった。 2.長距離輸送の可視化: 蛍光色素を用いて木部輸送経路の可視化と定量的解析の手法を確立し、様々な物質の長距離輸送の特性を解析した。ローダミンとフルオロセインを用いた解析では、2つの分子は根から地上部への輸送のパターンが異なった。さらに類似の3種のCLEペプチドに低分子の蛍光物質を結合し輸送を解析したところ、類似のCLEペプチドでも地下部から地上部への輸送のパターンに違いがあることが明確となった。これらの結果から、木部輸送は単に物質を送り届けるものではなく、荷によりその輸送が制御される可能性が示唆された。次に、開発した約50種の木部細胞壁改変変異体ラインから、物質の輸送パターンに影響を与える変異体をスクリーニングした。 3.維管束形成における時間的、空間的解析: 開発した維管束細胞分化誘導系VISUALを用いて、篩部細胞と木部細胞の形成における空間的時間的パターンの解析を行い、篩部分化と木部分化に相互排他的な空間的、時間的な制御がある可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標であった、CLE1-CLE7に関する欠損変異体を作成ないし収集することに成功し、これまで作成した様々な解析用植物体と合わせて、網羅的な解析を行うことができた。その結果、CLE1-CLE7が環境応答に関するシグナルとして働きうるという新しい知見を見いだした。また、年度当初の目標であった、蛍光色素(ローダミンとフルオロセイン)を用いた木部輸送経路の可視化と定量的解析を行うための手法を確立した。さらには、VISUALを用いて、篩部分化と木部分化に相互排他的な空間的、時間的な制御に関する新たな知見を得た。以上、当初計画した全ての研究を実行し、それらを通して新規の知見を得たことから、研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
CLE1-CLE7が環境応答を仲介する機能を持つことが示唆されたので、これらのペプチドによる環境依存的機能発現と遺伝子発現について解析を進める。また、それぞれの特異性についても解析を進める。一方で、これらのペプチドの環境応答機能に関わる受容体の探索を進める。また、開発した長距離輸送解析系を用いて、ペプチド情報伝達の長距離シグナルの伝達の解析を行う。とりわけ、細胞壁と輸送の関係について研究を進める。以上の研究を通して、環境シグナルを仲介するペプチドシグナルの機能と輸送の全体像を明らかにする。
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Research Products
(11 results)