2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物の自律分散型情報ネットワークを支える維管束シグナル伝達の解析
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
15H05958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 裕穂 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10165293)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 植物生理 / 植物 / シグナル伝達 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物にも個体全体を統合する情報ネットワークが存在すると考えられるが、その実体はほとんど明らかになっていない。本年度は、CLEペプチドシグナルの局所的なシグナル伝達と長距離シグナル伝達の解析、環境応答シグナルの役割について以下の解析を行った。 1.CLE1-CLE7ペプチドの下流シグナルの解析: CLE1-CLE7遺伝子の誘導系を用いたRNA-seqを行い、CLEペプチド下流因子の同定を試みた結果、いずれもABAのシグナル伝達系が存在することが明らかとなった。 2.CLE1-CLE7ペプチドの乾燥応答に関する生理学的解析: CLE1-CLE7機能欠損植物体を用い、乾燥応答CLE1-CLE7機能を解析した結果、複数のペプチドが乾燥シグナル応答に関連することが明らかとなった。 3.CLE1-CLE7機能欠損型遺伝子の多重変異体の作成: 機能重複の可能性を考え、CLE1-CLE7機能欠損型遺伝子の多重変異体をCRISPER/CAS9および交配で作成することを試みた結果、全ての単独の機能欠損型植物体を作成収集すること、CLE5を中心に複数の2重変異体の作成に成功した。 4. CLE1-CLE7ペプチドの環境応答に関する生理学的解析: CLE1-CLE7の機能を欠損した植物体を用いて、環境応答および微生物感染におけるCLE1-CLE7ペプチド機能を解析した。 5.乾燥応答に関するCLEペプチド受容体の同定: 乾燥応答CLEペプチド受容体の同定を試みた結果、2つの受容体候補が同定された。 6.CLEペプチドの長距離輸送の解析:昨年度開発した可視化手法を用いて解析した。また、このときの細胞壁の役割について、すでに同定した輸送が異常になる変異体を用いて解析した結果、1アミノ酸の違いがCLEペプチドの輸送パターンを変えること、この輸送パターンに細胞壁が関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標であった、CLE1-CLE7の欠損変異体を用いたペプチドの環境応答機能についての研究から、乾燥ストレスなどにおけるCLEペプチドの働きを明らかにすることに成功した。また、網羅的な遺伝子発現解析から、CLEペプチドの下流にABAシグナルが存在することが明らかとなり、機能解析の結果と対応することが示された。さらに、CLEペプチドの受容体候補者の同定に成功した。また、昨年開発した蛍光色素フルオロセインを用いた木部輸送経路の可視化技術を用いて、ペプチドの長距離輸送の観察に成功した。さらに、道管の二次細胞壁を改変した変異体を用いてのペプチド長距離輸送の解析から、それぞれ異なるCLEペプチドの長距離輸送が、細胞壁の改変により異なる影響を受けることが明らかとなった。以上、当初計画した全ての研究を実行し、それらを通して新規の知見を得たことから、研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
CLE1-CLE7のうち、とりわけ CLE5が環境応答を仲介する機能を持つことが示されたので、CLE5による環境応答機能の分子機構について解析を進める。同様に、CLE3, CLE2における機能についても解析を進める。また、VISUALを用いて、維管束組織におけるシグナル伝達の解析を進めると同時に、開発した長距離輸送解析系を用いて、ペプチドなどの長距離シグナル伝達の仕組みを解析する。これらの研究を通して、環境シグナルを仲介するシグナルの機能と輸送の全体像を明らかにする。また、細胞壁とCLEペプチド長距離輸送の関係についてさらに詳細に研究を進める。以上の研究を通して、環境シグナルを仲介するペプチドシグナルの機能と輸送の全体像を明らかにする。
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Research Products
(16 results)