2019 Fiscal Year Annual Research Report
「個性」創発の神経基盤解明にむけた網羅的な神経回路イメージング解析技術の開発
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
16H06532
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
冨永 貴志 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (20344046)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種村 健太郎 東北大学, 農学研究科, 教授 (20332322)
高島 一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (90357351)
梶原 利一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60356772)
|
Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 膜電位感受性色素 / 行動プロファイリング / バルプロ酸 / 海馬 / 嗅内野 / 嗅周囲皮質 / 前帯状皮質 / 光信号 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「個性」解析のモデル動物系を用いた評価計測系の確立(代表冨永、分担種村):周産期マウス、幼若期マウスへの神経作動性化合物(バルプロ酸等)投与モデルを作成して、評価計測の座標軸とする。海馬回路動作の基本的な解析法として、LTP現象、薬物投与などに対する回路動作の継時変化の解析、海馬各領野の応答の自動解析系を開発した。 2. 上の海馬神経回路の網羅的光計測手法の開発(代表冨永、分担高島、梶原):膜電位感受性色素(VSD)を用いた計測手法を適用することで、回路内の不均一なLTP誘導や神経細胞活動性の変化を明らかにした(Tominaga et al.,Front Cell Neurosci, 2018)。 3. 無染色標本での光計測法の開発(代表冨永):新規の早い無侵襲光信号を発見し、今後の活用が期待して性質を調べている。この基礎データとしての組織複屈折光で計測する膜電位応答についての論文を発表した(Tani-Koike et al., Biophysical J, 2020)。またオプトジェネティクス技術との同時記録を試み、成果を得ている(論文発表予定)。 4.海馬以外の評価神経回路の神経活動の光計測(代表冨永、分担高島、梶原):嗅内皮質・嗅周囲皮質を選び基準となる神経回路活動を記録している。嗅内野の長時間の興奮伝播について計測できた(Kajiwara et al.,Front Cell Neurosci., 2019)、レビューを投稿中。さらに、前帯状皮質(ACC)について特に脳梁を介した情報伝達について解析を進めた(論文準備中)。 5.配偶子を介した経世代「個性」影響の検討(分担種村)配偶子を介した経世代「個性」影響を検討する目的で、親世代マウスへの化学物質投与による配偶子および産仔マウスへの影響を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.「個性」解析のモデル動物系を用いた評価計測系の確立:行動プロファイリングと神経回路機能計測の両面において、バルプロ酸モデル、さらには近交系同士の異なる性質を持つマウス群の差を示す結果を得られている。光計測による神経回路機能解析の標準的なプロトコールとして、継時的回路変化計測と、海馬CA1、CA3、DGでの異なる刺激強度、GABA-A阻害剤存在の有無での回路動態の計測法を確立しつつある。 2. 海馬神経回路の網羅的光計測手法の開発:膜電位感受性色素 (VSD)を用いた計測手法を適用することで、回路内の不均一なLTP誘導や神経細胞活動性の変化を明らかにした。(Tominaga et al., Front Cell Neurosci, 2018) 3. 無染色標本での光計測法の開発:無染色のスライス標本からの信号計測を試みたところ成功した。これはこれまでに報告されていない早いシナプス後細胞依存性の光信号であり今後の活用が期待される。このような新規の非侵襲的計測を用いることで「個性」の回路機能の解明が進むことが期待される。この基礎データである複屈折性の変化に関する論文を出版した(Tani-Koike et al., 2020)。 4.海馬以外の評価神経回路の神経活動の光計測:嗅内皮質・嗅周囲皮質を選び基準となる神経回路活動を記録することに成功し(Kajiwara et al., Front Cell Neurosci., 2019)、レビューを投稿した。さらに、前帯状皮質(ACC)の神経回路について解析を進めた。 5.配偶子を介した経世代「個性」影響の検討(分担種村)配偶子を介した経世代「個性」影響を検討する目的で、親世代マウスへの化学物質投与による配偶子および産仔マウスへの影響を検討している。このような新しい試みをすることでより深く「個性」を調べられる動物モデルが作成できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの動物モデルの確立という面では、いくつかの化学物質投与モデルの確立が見込めており、特にバルプロ酸の投与プロトコールでは、低用量モデルと、高用量モデルの両方を調べ、基本的に同じような回路機能の変調を観察している。現在、発達段階を追って、どのような変化がおこるかを検証している。これらを異なる性質を示す「個性」群と捉えて神経回路機構を解明する。これに加え、近交系の活用、さらにはいくつかの遺伝子改変モデルマウスの導入によって更に「個性」を探索する動物モデルを拡充する。計測装置の面では、さらに光計測を中心とした自動化をすすめスループット性を良くしていく。これは網羅性を兼ねたLTPの連続記録が可能な手法として確立しており(Tominaga et al., Front Cell Neursci., 2018)、今後の応用が待たれる。また、無染色標本での計測のような新規の計測手法を開発し、他の研究グループで必要とされる解析ニーズに答えられるようにする。行動プロファイリングではこれまで多くの動物の基礎データを収集しており、これに配偶子、産仔マウスへの影響のような新規の解析視点を加えることで、「個性」の理解に繋げられる。また、海馬に偏りがちな神経回路機構の検証であったが、嗅内野、嗅周囲皮質、前帯状皮質のようないくつかの脳領野の神経活動について基礎データを積み重ね神経活動のカタログ化により「個性」解析に資する。
|
Research Products
(25 results)