2019 Fiscal Year Annual Research Report
RTと環境駆動による長寿命・高出力・多機能バイオロギングシステムの開発
Project Area | Systems Science of Bio-navigation |
Project/Area Number |
16H06537
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
妻木 勇一 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50270814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 恭一 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (20570708)
多田隈 理一郎 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (50520813)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 知能機械 / バイオロギング / ドローン / 水中ロボット / 環境駆動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロボットテクノロジーを駆使するとともに,環境駆動と呼ぶコンセプトを活用した新しいバイオロギング手法を確立することが本研究の目的である.本年度得られた成果は以下の通りである. ① 環境駆動型クジラ用ローバーの開発: 機体の軽量化を実現しつつ,吸盤数を11個から14個に増設し,吸着性能を向上させた第7試作機を開発した.本機は,耐圧2,000 m のシンタクチックフォームを浮力体として採用するとともに,万が一衝撃により浮力体が破損しても浮力を失いにくい機能を持たせた.また,ローバーに搭載する発信機の圧力試験や通信試験を行い性能を確認した.さらに,ドローンを用いたクジラ用ローバー装着システムでは,防水サーボを採用するなど,耐環境性能を向上させた.一方,小笠原沖で試験を実施し,マッコウクジラに第7試作機の吸盤の一部が吸着した.完全な吸着状態には至らなかったが,実地にて人員配置や手順を含めた全体システムが有効に働くことを確認できた. ② カメラタグ取り付け用高機動水中ドローン開発:動力学シミュレータを用いて,機構パラメータと制御システムの検討を行った.さらに,小型軽量化を実現するため,システムを再検討し,小型・低コストでありながら高出力の第2試作機の基本設計を行った. ③ 環境駆動型マイクロ発電システムの開発:耐久性・信頼性向上のために,材料や部品形状の検討を行った. ④ RTを用いた遠隔システム開発及び⑤鯨類の行動理解:ウミネコ用遠隔操作型データロガー分離装置の小型・軽量化を進め,防水性を高めることにより,実際の自然環境での使用に耐えられる試作機を開発した.また,オオミズナギドリの体重を巣の近くで自然に計測できる装置の開発を行った.さらに,遠隔薬剤注入システムの開発に着手した.一方,小笠原のイルカ行動調査のデータ解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 環境駆動型クジラ用ローバーの開発:耐圧性能を含め,全ての機材を搭載してマッコウクジラへの調査を実施可能な第7試作機を開発した.また,ドローンを用いたクジラ用ローバー装着システムも実地環境に耐えられるシステムとして開発し,現地試験を実施した.実地試験では4日間で36フライトを行い,2度,吸盤の一部がマッコウクジラに吸着した.実地にて手順を含めた全体システムが有効に働き,基本的な枠組みが完成したと言える.さらに,将来ロガー装着を動物学者が容易に実施できるように,小型軽量な投下型ロガーの試作機も制作した.当初計画以上の成果が得られている. ② カメラタグ取り付け用高機動水中ドローン開発:やや開発が遅れているが,船上での取り回しが困難だった第1試作機よりも小型・高出力・低コストの第2試作機の設計に目処が付いたため,当初計画以上の性能が見込まれる. ③ 環境駆動型マイクロ発電システムの開発:発電能力の目処は付いているが,実地での十分な耐久性及び信頼性を得るには至っていないため,やや遅れている. ④ RTを用いた遠隔システム開発及び⑤鯨類の行動理解:ウミネコ用遠隔操作型データロガー分離装置の小型・軽量化及び防水性が実際の自然環境下での使用が可能なレベルに達した.また,オオミズナギドリの体重計測を自動で行うシステムの試作機を制作した.さらに,遠隔薬剤注入システムの開発にも着手した.当初計画以上の成果が上がっている. 以上のように,本研究の主たるテーマである①及び④のテーマが当初計画以上に進んでいる.一方,②及び③のテーマについてはやや遅れているが,全体としておおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,研究代表者1名,研究分担者2名,連携研究者2名,研究協力者6名(プロジェクト研究員1名,大学院生2名,学部生3名)の体制で行う.なお,本年度は新型コロナウィルスの影響で,4月,5月は国内移動が厳しく制限され,その後の見通しも立っていない.本研究は実地(小笠原,蕪島,粟島)での試験が重要となるが,研究室内での開発に重心を置きつつ,参加研究者の安全を最大限に確保して可能であれば現地試験を実施する. ① 環境駆動型クジラ用ローバーの開発:クジラ用ローバーの吸着能力をさらに向上させ,安定した吸着歩行を実現させる.具体的にはバルブシステムを見直し,より安定した動作の実現を目指すと伴に,浮力体を始めとする部品形状を見直し,力学的特性を向上させる.また,ドローンを用いた投下システムの映像遅延が操作性に大きな影響を与えるため,これを減少させるカメラ・映像提示システムを新たに導入する.改良した機器を用いて,小笠原沖での実地試験を実施し,システムの妥当性を検証すると伴にマッコウクジラの生態解明を目指す. ② カメラタグ取り付け用高機動水中ドローン開発:高い機動性を実現するため,動力学シミュレータの結果に基づき機構パラメータを選定し,より小型で高出力な第2試作機を開発する.操作システムと統合し,大型水槽での検証後,海での運用を目指す.また,水中ドローン用ロガーを開発する. ③ 環境駆動型マイクロ発電システムの開発:材質と形状の検討を進め,耐久性,信頼性向上を目指す. ④ RTを用いた遠隔介入実験システム開発及び⑤鯨類の行動理解:ウミネコ用遠隔操作型データロガー分離装置は,さらなるメカ部やシステムの改良を行い,信頼性・操作性の向上を目指す.オオミズナギドリ用体重計測装置の試作機は,実地試験での運用が可能な段階に引き上げ,遠隔薬剤注入システムは第1試作機を完成させる.
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