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2017 Fiscal Year Annual Research Report

薬剤耐性の代謝アダプテーション

Planned Research

Project AreaTransomic Analysis of Metabolic Adaptation
Project/Area Number 17H06303
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

松田 史生  大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50462734)

Project Period (FY) 2017-06-30 – 2022-03-31
Keywords薬剤耐性獲得機構 / 代謝アダプテーション / 代謝フラックス解析 / 速度論代謝モデル / トランスオミクス解析
Outline of Annual Research Achievements

(1)短期的薬剤耐性の代謝フラックス解析:ヒト乳がん細胞株(MCF7)に注目し、代謝阻害剤(ロテノン、2DG)や抗がん剤(タキソール、タモキシフェン)等を処理した際の短期的な耐性応答を、物質収支レベルで解析した。その結果、薬剤処理後数時間後までに、グルコース消費、乳酸生産速度などが大きく変化することを見出し、代謝アダプテーションが起きていることを確かめた。その実態を明らかにするため、培養条件の最適化を行い、薬剤処理後24時間後の代謝フラックス状態を解析可能とした。MCF7にタキソール、ロテノンを処理した後24時間までに起きる代謝アダプテーションを13C代謝フラックス解析法で測定した。タキソール処理時にはTCAサイクルの代謝フラックスレベルが40%程度増加し、さらに解糖系の代謝フラックスレベルが20%程度減少することを明らかにした。得られた結果を基にNADPHとATPの再生消費バランスを算出し、タキソール処理時にはエネルギー利得である総ATP再生量が増加することを定量的に明らかにした。
(2)熱力学、速度論に基づくトランスオミクス解読法の開発:大腸菌、酵母、シアノバクテリアのトランスオミクスデータを用い、トランスオミクスを繋ぐ方法を検討した。出芽酵母1遺伝子破壊株の代謝物絶対定量値から各代謝反応のギブス自由エネルギー変化ΔGを算出したところ、ΔGは代謝変化に対して大きく変化せず、熱力学的な構造を維持しながら代謝アダプテーションが起きると推測された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

H29年度の研究実施計画にしたがい、ヒト乳がん細胞株(MCF7)のグルコース消費、乳酸生産速度などの物質収支を計測し、代謝阻害剤(ロテノン、2DG)や抗がん剤(タキソール、タモキシフェン)等を処理した際の応答を解析できた。また、13C代謝フラックス解析を適用するため、培養条件等の最適化を行い、薬剤処理後24時間後の代謝フラックス状態を測定可能とした。これを用い代謝阻害剤処理後の代謝アダプテーションをフラックスレベルで測定し、算出したNADPHとATPの再生消費バランスから細胞のエネルギー利得を見積もることに成功した。
さらに、これまでに取得した有用物質生産微生物のトランスオミクスデータを用い、トランスオミクスを繋ぐ方法を検討した。各代謝反応のギブス自由エネルギー変化ΔGを算出することで、出芽酵母1遺伝子破壊株の熱力学的状態を明らかにし、代謝アダプテーションとΔGとの関連を解析することに成功した。H29年度に研究拠点の移動を行ったが、計画通りの成果を出すことができた。以上の進捗状況から(2)おおむね順調に進展している。とした。

Strategy for Future Research Activity

熱力学、速度論に基づくトランスオミクス解読法の開発:代謝機能欠損出芽酵母中心代謝のトランスオミクスデータを用い、トランスオミクスを繋ぐ方法に検討を加える。代謝物絶対定量値をもとに熱力学的な観点から代謝アダプテーション過程を解読した成果をもとに、基質に対する酵素のミカエリス定数 (Km)と基質濃度の比較から酵素活性が代謝フラックスをコントロールできる反応を推定することを試みる。
薬剤耐性の「短期」代謝アダプテーション:トランスオミクスを測る:ヒト乳がん細胞株(MCF7)に代謝阻害剤(ロテノン)や抗がん剤(タキソール)を処理し、12時間後までの短期的な応答過程のメタボローム、プロテオーム、トランスクリプトームデータ等を取得する。13C-代謝フラックス解析を拡張した手法を開発し、代謝フラックスの短期的な応答過程を計測する。
数理代謝モデルを用いた代謝アダプテーションの解析法の構築:トランスオミクスを繋ぐ:速度度論代謝モデルを構築する最大の課題はパラメーターの不足である。天気予報では、ランダムに設定したパラメーターを持つ多数の数理モデルを用いた予測を行い、台風の予想進路のような範囲をもった予測を行う(アンサンブルモデリング)。また、可能な限りモデルを簡略化し、パラメーター数を減らす必要がある。そこで、バイオケミカルシステム理論、代謝コントロール理論に基づく速度度論代謝モデルを構築し、アンサンブルモデリング法を用いてトランスオミクスネットワークを同定する手法の構築を試みる。

  • Research Products

    (9 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (7 results) (of which Invited: 2 results)

  • [Journal Article] Metabolic engineering of mevalonate-producing Escherichia coli strains based on thermodynamic analysis2018

    • Author(s)
      Nagai Hikaru、Masuda Ami、Toya Yoshihiro、Matsuda Fumio、Shimizu Hiroshi
    • Journal Title

      Metabolic Engineering

      Volume: 47 Pages: 1-9

    • DOI

      10.1016/j.ymben.2018.02.012

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Learning from quantitative data to understand central carbon metabolism2017

    • Author(s)
      Matsuda Fumio、Toya Yoshihiro、Shimizu Hiroshi
    • Journal Title

      Biotechnology Advances

      Volume: 35 Pages: 971~980

    • DOI

      10.1016/j.biotechadv.2017.09.006

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] パクリタキセル処理に対するヒト乳がん由来細胞株MCF-7の代謝アダプテーション2017

    • Author(s)
      荒木 千絵、前田 昂亮、岡橋 伸幸、松田 史生、清水 浩
    • Organizer
      メタボロームシンポジウム2017
  • [Presentation] 代謝物絶対定量データを用いたシアノバクテリアの動的代謝モデル構築2017

    • Author(s)
      西口 大貴、永井 暉、松田 史生、清水 浩
    • Organizer
      メタボロームシンポジウム2017
  • [Presentation] がん細胞株間の中央代謝フラックス比較2017

    • Author(s)
      上原 ひかる、荒木 千絵、前田 昂亮、岡橋 伸幸、松田 史生、清水 浩
    • Organizer
      メタボロームシンポジウム2017
  • [Presentation] 代謝フラックスレベルでの動物培養細胞中心代謝の解析2017

    • Author(s)
      松田 史生、前田 昂亮、荒木 千絵、上原 ひかる、岡橋 伸幸、清水 浩
    • Organizer
      メタボロームシンポジウム2017
    • Invited
  • [Presentation] 計測に基づく中心代謝調節機構の解析2017

    • Author(s)
      松田 史生
    • Organizer
      JBA 発酵と代謝研究会
    • Invited
  • [Presentation] 代謝物濃度絶対定量値を用いたエタノール生産シアノバクテリア代謝律速点の解析2017

    • Author(s)
      西口 大貴、永井 暉、松田 史生、清水 浩
    • Organizer
      第69回日本生物工学会大会
  • [Presentation] 抗がん剤処理によるがん細胞代謝フラックス変動の解析2017

    • Author(s)
      荒木千絵、前田昂亮、岡橋伸幸、松田史生、清水浩
    • Organizer
      第5回がんと代謝研究会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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