2018 Fiscal Year Annual Research Report
市民による歴史問題の和解をめぐる活動とその可能性についての研究
Project Area | Creation of the study of reconciliation |
Project/Area Number |
17H06338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外村 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40277801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 正明 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20370207)
猪股 祐介 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (20513245)
坂田 美奈子 苫小牧駒澤大学, 国際文化学部, 准教授 (30573109)
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
菅野 敦志 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (70367142)
松田 ヒロ子 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (90708489)
岡田 泰平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70585190)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 和解学 / 市民運動 / 歴史認識 / 過去清算 / 戦後補償 / 植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、引き続き、戦後補償運動等に関わってきた市民運動家の文書の整理およびキーパーソンを招いての聞き取りを行ったほか、分担研究者各人が、それぞれ担当する歴史問題の「和解」のための市民の活動についての分析を進めた。各人の中間的な分析についても適宜、情報を共有した。それをもとに、代表者の外村が、日本における戦後補償運動の経過とそこから見えてくる課題についてまとめた論文を作成した(2019年度中に発表する予定)。各分担研究者も、この原稿をもとに議論を重ね、それぞれの担当についての論稿の準備を進めている(2019年度中に論稿をまとめる予定)。 本年度に実施した聞取りでは、主に市民運動団体の中心的メンバーが対象となった。これまでの市民運動が、イデオロギーや政治的な対立構造を持ち込むことなく、あくまで被害当時者の人権救済を軸に据した活動を展開することによって、被害当事者との信頼を構築し、運動を広げることが可能になったことなどが把握できた。それらを踏まえて、3月4日には、人権侵害をこうむった「被害当事者」とそれ以外の「非当事者」との関係、問題解決のための「非当事者」の役割が何であるかを考えるシンポジウムを開催した。戦後補償運動等歴史問題や公害での被害者の支援にかかわっている方をパネラーとして発言をいただくとともに、会場に参加した様々な市民からも活発な発言があり、当事者としての意識を持つことの意味や和解の困難さを自覚しつつも活動をし続けることの重要さなどが論じられた。 このほか、3月17~19日には、中国ハルビン市近郊の「満蒙開拓団」関係の施設や日本の侵略戦争関係の博物館等を訪問し、被害者の記憶や歴史認識の現状についての把握、検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各分担研究者のそれぞれが取り組む課題について、文献資料、関係者からの証言収集を順調に進めている。また、国家ごとの歴史的脈絡や政治参加の方法の相違に規定された市民運動の展開や社会的位置の違い、人権侵害の救済やその認定によってのみでは「和解」が実現しないことをどのように考えるかなど、今後の研究のための議論の蓄積が一定程度できつつある。市民運動関係者からの聞き取りも20名程度について行い、ある種の傾向が見えてくると同時に、今後、計画的に聞き取りを遂行していく見通しも立ちつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現在遂行している市民運動関係の史料の整理、関係者からの聞き取り、市民運動団体の「和解」にかかわる行事などへの参与観察を行い、分担研究者はそれぞれが担当する課題についての分析を進める。戦後補償等の史料の整理については、予想していた以上に分量が多く細かな文書が含まれていて時間がかかっているため、整理担当の人員を増やすなどの対応を取る。そのうえで、重要な史料についてはスキャニングして、分担研究者間での共有を図る。 関係者からの聞き取りについては、市民運動団体の中心的な担い手のほか、被害当事者やその遺族、関連する行政施策の担当者、中核的メンバーではないがかかわりを持っている人などにも対象を広げていく。また許可の得られた重要な聞取り内容については、和解学のウェッブサイトなどを活用して、公開していく。 シンポジウムについても、今年度も実施する。研究者のみならず、歴史問題の「和解」をめざす市民運動の担い手だけではなく、関心を持つ市民、関連する行政施策の担当者等にも参加を呼び掛けて議論の深化を目指したい。
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Research Products
(28 results)