2020 Fiscal Year Annual Research Report
市民による歴史問題の和解をめぐる活動とその可能性についての研究
Project Area | Creation of the study of reconciliation |
Project/Area Number |
17H06338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外村 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40277801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 大将 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (00582834)
宮本 正明 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20370207)
猪股 祐介 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (20513245)
坂田 美奈子 苫小牧駒澤大学, 国際文化学部, 准教授 (30573109)
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
加藤 恵美 帝京大学, 外国語学部, 講師 (60434213)
菅野 敦志 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (70367142)
岡田 泰平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70585190)
松田 ヒロ子 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (90708489)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 和解学 / 市民運動 / 歴史問題 / 過去清算 / 戦後補償 / 植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
この間、行ってきた市民運動関係者の資料整理は順調に進んでおり、3月末にはその作業にあたっている大学院生を中心に関連する研究の報告会が組織された。市民運動関係者のインタビュー調査については、オンライン会議システム利用が可能な、遠隔地に住む方々を意識的に対象としたことによって、大都市ではなく地方都市での市民運動の展開の特徴やそれが可能となる条件などについて理解を深めることができた。 分担研究者は、各自のテーマについての論文をいったんまとめており、2020年8月にはそれらの検討を全員で行った。それをもとに現在、最終的な論文集の刊行の準備を進めている。また、分担研究者はそれぞれ関連する学会等での報告を行っているほか、2021年3月4日の国際シンポジウム(“The Development of Reconciliation Studies in East Asia,” Kakenhi (1902) “Creation of the Reconciliation Studies,” Online, 4 March 2021)で、この間の本研究班の研究内容の紹介等を行っている。 このほか、2021年3月29日には、本研究班主催で、歴史問題をめぐる市民運動に対するバックラッシュに焦点を当てた講演会を開催した。そこでは、関東大震災時の朝鮮人虐殺の追悼やアイヌの文化的復権等の活動にかかわっている市民運動家から、歴史否定やヘイトスピーチの実態の報告とともに、それにどのように対処していくべきかの問題提起があり、科研メンバーや参加した市民運動関係者らと討論を行った。 また、和解学の創生のプロジェクトが設定した、研究会等にも本研究班のメンバーが積極的に参加し、ほかの研究班のメンバーの研究成果の吸収に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 研究代表者が担当する、歴史問題についての日本の市民運動を概観する論考と、分担研究者が設定した歴史問題についての個別的な事例の論文はすでに完成の段階にあり、本年度中に論文集が刊行される予定である。それに基づく、各事例の比較検討の議論も行い、東アジアの市民運動の共通性や各地域の独自性・特徴なども把握できつつある。市民運動関係者のインタビューについても、その文字化を進めることができ、本人の許可を得たうえで研究に活用することが可能な状態となっている。市民運動関係の資料整理についても、現在取り組んでいる田中宏関係文書については8割程度のデーベース入力を終えている。 なお、「おおむね」という留保は、新型コロナウィルス問題の影響により、海外渡航が必要な調査活動が不可能となり、日本国内の関連施設の見学、文書館の利用等に制約が生じたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、計画の最終年度であるため、これまでの研究をまとめることが必要となる。そのための補充調査と点検の作業に最大限、集中することとしたい。具体的には、すでに蓄積されている市民運動家のインタビュー記録や田中宏関係資料の活用を通じて、現在まで調査で十分に視野に入れていなかった活動や、分析で不足している視点などを確認し、研究の内容をより豊富なものとしていく。また、市民運動関係者のインタビューでは、近年、取り組みに参加し始めた若い世代の活動家や幹部レベルではない各種団体の一般会員などにも対象範囲を広げるとともに、これまで聞き取りを行ったキーパーソンについても必要があれば、補充調査として再度、お話しをうかがうこととする。なお、田中宏資料についてはデータベースの作成を今年度中に完了する。 こうした作業を踏まえたうえで、市民運動が歴史問題の和解にどのように貢献できるか、その際の課題が何であるかについても、議論を深めていく。同時に、「和解学の創成」のほかの研究班との合同での研究会を組織し、「和解学」全体において市民運動研究がどのような意味を持つのかを明確にしていく。 そこで得られた知見についての対外的な発信についても強化していく。具体的には、すでに準備中の論文集を刊行するとともに、これまでのシンポジウムの記録や許可の取れた市民運動家のインタビューなどを「和解学の創成」のHPを用いて公表していく。また、年度内に市民運動家とともに、歴史問題にかかわる市民運動の次世代継承をテーマとする国内シンポジウムの開催を予定している。このほか、8月に予定されている国際和解学会への参加、台湾、韓国の関係機関と連携した、東アジアの歴史問題と市民運動の展開と課題を考えるシンポジウムも開催する。
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Research Products
(29 results)