2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト-細菌叢間 化学コミュニケーションの理解と炎症性腸疾患・がん・がん免疫
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
17H06404
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 和子 近畿大学, 医学部, 講師 (20580559)
上嶋 一臣 近畿大学, 医学部, 講師 (70411593)
櫻井 俊治 近畿大学, 医学部, 講師 (90397539)
角田 郁生 近畿大学, 医学部, 教授 (00261529)
岡田 斉 近畿大学, 医学部, 教授 (20280620)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫関連有害事象irAE / 免疫チェックポイント阻害薬 / NMN / CMG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では炎症に起因する病態における宿主とその微小環境との相互作用は、生体リガンドを介した化学コミュニケーションとして作用すると仮説している。抗がん薬の領域において免疫チェックポイント阻害薬は、その効果及び有害事象に、ヒト-細菌叢との間の化学コミュニケーションの理解が重要と考えている。炎症性腸疾患および炎症が介在する消化器がん、中枢神経炎症疾患である多発性硬化症とアルツハイマー病に焦点をあて、微小環境における宿主と細菌叢との相互作用を解析することにより、疾患の分子機構の解明と治療薬の創出につなげることを目的とした。具体的には、1) 腸内細菌叢のメタゲノム、メタトランスクリプトーム解析技術の向上、2)炎症性腸疾患患者における腸上皮細胞、腸内細菌叢のシーケンシングによる炎症性腸疾患の発がんリスクに対する影響および宿主・微生物間のインタラクションと病態との関連性についての検討、3)免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けた肝細胞癌患者の糞便中のメタゲノム、メタトランスクリプトーム解析による免疫チェックポイント阻害薬の副作用及び効果に及ぼす常在細菌叢の影響の検討、4)中枢神経系(CNS)炎症性疾患である多発性硬化症(MS)およびアルツハイマー病の発症に対する腸内細菌叢の影響の検討、を目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)炎症性腸疾患、消化管免疫関連有害事象(GI irAE)における宿主・微生物間の相互作用: ICIによるGI irAEと潰瘍性大腸炎(UC)の病態比較を、腸管粘膜組織の全トランスクリプトームと細菌叢16S rDNAシークエンスを行った。パスウェイ解析により炎症部位および非炎症部におけるGI irAEとUCの病態と微小環境の類似性と相違点を示した。PiphillinによりirAEとUC炎症部で脂肪酸を含む分子輸送系に関連するパスウェイが濃縮されていることが示された。また、微生物組成が炎症の重症度や治療効果と関連していることが明らかになった。レスポンダーは、DNA修復や細胞周期と関連していたが、大腸における自然免疫反応やNFAT、IFN-シグナル伝達経路とは逆相関していた。 2)細菌叢―宿主間化学コミュニケーション~微生物叢の変化が宿主細胞に及ぼす影響: DSS/AOM炎症性腸疾患―大腸癌マウスモデルにおいて、マウス大腸上皮組織の遺伝子発現のGSEA解析を実施し、腸内細菌叢と腸内粘膜間のコミュニケーションが発がんに関わることを示した。発がんマウスにおいて細菌叢によるLAM生合成経路の集積が、腸管粘膜細胞PI3K-AKT-mTORシグナル経路とクロストークすることを見出した。同モデルを用いて発がん抑制実験を行い、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)投与により、TNFα等炎症経路の抑制、NMNを投与でがん化が抑制することを発見した。 3)中枢神経炎症疾患と細菌叢の化学コミュニケーション: 多発性硬化症とアルツハイマー病のマウスモデルで、細菌叢と中枢神経のクロストークに介在する血中因子を同定した。自己免疫性脳脊髄炎モデルで、CMGにより症状が抑制することを見出した。多発性硬化症モデルにおいて腸内細菌叢の変化が中枢神経内の免疫関連遺伝子発現と相関すること等を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに得た新しい知見を、論文化する。また、下記項目についての研究を推進する。 1) 炎症と微小環境における宿主・微生物間の相互作用の検討:IBDから発癌を惹起するマウスモデルを用いて、抗PD-1抗体の抗腫瘍効果を検討し、腸内細菌叢が微小免疫環境に及ぼす影響を明らかにする。 2) IBD関連大腸がんにおける線維化の機序解明:IBD関連大腸がんにおける繊維化に重要な役割を果たす抗老化因子Sirtuinについてその抑制化合物の効果を引き続き検討する。 3) 腸内細菌叢と中枢神経炎症疾患のクロストークの検討:多発性硬化症とアルツハイマー病のマウスモデルを用い、同因子の阻止抗体やノックアウトマウスなどによる検証実験、ピロリ菌感染実験、抗生物質による治療実験を継続・実施する。 4) 大腸癌発がん過程における組織の線維化の抑制機構と細菌叢との相互作用の解明:DSS/AOMによる大腸がん発がんモデルにおいて、組織の線維化と大腸がんの腫瘍形成過程における新規抑制化合物の抑制効果を宿主と細菌叢との相互作用から解析し、宿主の免疫応答との関連を明らかにし、予測モデルを作成する。
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Research Products
(16 results)