2008 Fiscal Year Annual Research Report
ダスト降下に伴う海洋表層生物群集の応答と気候へのフィードバック
Project Area | Linkages in biogeochemical cycles between surface ocean and lower atmosphere |
Project/Area Number |
18067008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津田 敦 The University of Tokyo, 海洋研究所, 准教授 (80217314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道田 豊 東京大学, 海洋研究所, 教授 (20323628)
齊藤 宏明 (独)水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 室長 (30371793)
高橋 一生 (独)水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 主任研究員 (00301581)
鈴木 光次 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (40283452)
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Keywords | 鉄 / 窒素固定 / 亜熱帯太平洋 / ダスト / 台風 / 生態系応答 |
Research Abstract |
平成19年度に行った台風通過生態系応答模擬実験は2点のみの結果であったので、KHO8-2次白鳳丸航海において、昨年度と同様の実験を、計4点で行った。結果は昨年度の結果を支持するものであり、すべての湧昇や混合を模擬する実験区画で、20μm以上の大型の藻類が増殖し、HPLCによる色素分析で珪藻類および黄金色藻類が増加したことが明らかとなった。さらに、窒素固定に関与する遺伝子の発現を調査した結果、台風通過は窒素固定速度を増加させる可能性は低いことが示された。この結果、貧栄養で大型藻類が優占することが周年ない亜熱帯外洋においても、台風の通過による湧昇や混合によって栄養塩が添加されると、大型藻類が増殖することが確かめられた。また、同航海では、亜熱帯性カイアシ類Neocalanus gracilisに関して、脂質分析用の試料の採集、および食性解析実験を行い、現在分析中である。これらのデータから、Neocalanus gracilisは、貧栄養海域の化環境に適応して、脂肪蓄積能を有し産卵にこれら蓄積栄養を使うこと、さらには、若干深い水深で産卵し、成長に伴う鉛直移動を行うことが推測され、これらの生態学的特徴が、同属の、北方への進化的進出に有利に働いたと考えられた。現在は、台風およびカイアシ類に関する論文を取りまとめ中である。さらに、既存試料を用いて、亜熱帯性カイアシ類、Eucalanus californicusに関しても、地理分布、生活史を解析中である。また、投入したクロロフィルセンサー付きアルゴフロートは順調に作動しているが、残念ながら、台風はその近傍をまだ通過していない。
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