2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
18068006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土井 正男 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (70087104)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥薗 透 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任講師 (10314725)
|
Keywords | 乾燥プロセス / 薄膜 / ゲル化 / シミュレーション |
Research Abstract |
高分子溶液の微小流動におけるレオロジーに関する研究は、塗装・印刷技術、電子回路作成など多くの分野でその重要性が認識されているにもかかわらず、学問的研究はほとんど未開拓の状態である。本研究では、基板上の微小な領域における高分子溶液の流動現象に対して、まず現象を支配する物理を実験的に明らかにし、現象を記述するモデルの構築を行なってきた。 本研究では、微小流動現象として、特に基板上の高分子溶液の溶媒蒸発に伴う流れに注目した。溶媒蒸発にともなうガラス化による弾性応力と拡散の結合、高分子の流れ、高分子と基板のすべり、表面膜の形成など、基礎的に重要な問題であるだけでなく、インクジェットプリンティング技術においても重要な現象である。 H21年度は、以下のようなテーマを掲げて実験・理論研究を行なった。 (1)マランゴニ効果を利用した高分子溶液液滴の乾燥後形状の制御 高分子溶液からなる液滴を基板上で乾燥させると、乾燥後に高分子固形成分がリング状の残渣を形成する、いわゆるコーヒーステイン現象が起こる。乾燥後の膜厚不均一性は、インクジェット技術を用いた電子回路の作成における電気抵抗の不良に繋がるなど、多くの問題を引き起こすため、解決策が数多く検討されてきたが、依然として困難な点が多い。我々は、高分子溶液中に微量の界面活性剤を添加したところ、濃度マランゴニ効果を利用して液滴内部の流動状態をコントロールすることによって乾燥後にほぼ均一な厚みの膜を得ることに成功した。また、現象のモデル化を行なうことにより、現象を支配する因子を突き止めることに成功した。 (2)再流動化による高分子溶液液滴の乾燥後形状の制御 上記(1)とは異なるアプローチとして、我々は、乾燥後のコーヒーステイン状の膜を溶媒蒸気に晒した後、再び乾燥させる実験を行なった。その結果、溶媒の凝縮により、膜内部の再流動化を誘起して膜形状を変化させ、再乾燥後にほぼ均一な膜が得られることを発見した。また、再流動化がどのような現象であるかを突き止め、簡単な理論的考察から、実際にこの操作を実施する場合の最適な時間スケールを見積もることに成功した。 以上の成果は、応用上重要な知見を与えるとともに高分子溶液の微小流動におけるレオロジー現象に関する新たな視点をもたらすものである。
|
Research Products
(43 results)