2019 Fiscal Year Annual Research Report
やわらかいダイナミクスとフレキシブルセンサー技術の融合による情報処理限界の突破
Project Area | Science of Soft Robot: interdisciplinary integration of mechatronics, material science, and bio-computing |
Project/Area Number |
18H05472
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 浩平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (10740251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹井 邦晴 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20630833)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | リザバー計算 / 物理リザバー計算 / ソフトロボット / フレキシブルセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まずは本研究計画を遂行する上で必要となるReservoir Computing(RC)の理論的な側面について研究を行った。特に“やわらかさ”がRCにおいてどのように表現されるのかに関して、RCにおける記憶容量[T. Haruna, et. al., PRE, 2019.]ならびにEcho state property(ESP)[M. Komatsu, et al., IJRR, 2020.]の観点から検討した。また、やわらかい身体と脳のカオスが融合することで非常に効果的に学習が実現されることも明らかになり、アイディアの素描を兼ねて学会論文の形で発表した[K. Inoue, et. al., Proc. of MHS2019] 。次年度以降に、この発見をより大きく展開していく予定である。実験に関しては、Physical Reservoir Computing (PRC) におけるopen-loopの設定で、複数の実験を開始している。まず、研究分担者の開発したフレキシブルセンサーを用いたソフトマテリアル計算機の実装に関しては、現在系統的な実験が一通り終了し、結果をまとめている段階にある。また、やわらかいデバイスと機械学習やRCとの融合を導入した研究も行い、多数の企業ならびに他大学との共同研究も実現し、いくつはすでに学会論文の形で発表した[R. Sakurai, et. al., Proc. of RoboSoft2020; K. Wakamatsu, et. al., Proc. of RoboSoft2020]。その他、国際学会において、PRCに関する多数の招待講演を行った。また、IEEE Robosoft2019において本新学術領域のプロジェクトをテーマとしたワークショップを企画し、世界的に本領域の活動をアピールした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物において、身体のやわらかさというのは普遍的にみられる特性である。これまでの先行研究によりこのやわらかい身体が、ESPを持つフィルターとして計算資源になることがわかってきている。一方で、それらやわらかい身体に包まれている脳は、高次元の非線形力学系であり、カオスなどの複雑な挙動をしめすことが知られている。これら二つの特性は、かたやsoft robotics、かたや神経科学において、普遍的な特性との共通見解があるものの、脳-身体系としてそれら二つが合わさった形で自然界に存在する理由に関しては、いまだ議論がなされていない。この点に関し、我々はカオスを積極的に使ったRCにおけるinnate trainingという学習手法に着目し、やわらかい身体に入力をいれた際に付与されるmemoryを介した応答(この特性の抽象的な機能として、input reservoirという概念を提案した)がカオスに投射される際、このinnate trainingの効果が飛躍的に向上することを示した[K. Inoue, et. al., Proc. of MHS2019]。この結果はやわらかい身体と脳におけるカオスの組み合わせの機能的な意義に関して、一つの示唆を与える。また、入力に強く駆動されたリカレントニューラルネットワークにおいて、情報流最大化に基づいて事前学習を施すと、入力からdelay lineのような結合が自己組織することを明らかにした[T. Tanaka, et. al., Neurosci. Res., 2020]。この構造は、外界と乱雑なダイナミクスの間にインターフェースが生成していることを示しており、input reservoirの生成機構であることが示唆される。実験に関しては、人事の異動やプラットフォームの設営の遅れなどがあったものの、多くの共同研究にも恵まれ、概ね予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、引き続きソフトロボットにおける身体の計算能力に関して、open-loopの設定で、PRCの理論ならびに実験的研究を進めていく予定である。また、本年度後半からは、close-loopの設定におけるPRCの研究に移行することを目的とする。はじめにopen-loopの設定での計画を具体的に述べる。まず、これまでに明らかになったやわらかい身体とカオスの関係に関してより系統的に理論と実装の面で展開する予定である。また、ブリヂストンとの共同研究である人工筋肉の高精度状態推定に関して、RCならびにPRCの研究を精力的に進める予定である。ここでのPRCは人工筋肉それ自体のダイナミクスを活用するのみならず、スピトロニクスを活用したPRCのニューロフォーフィックデバイス応用も視野に入れる。次に、研究分担者の開発したフレキシブルセンサを活用し、フレキシブル計算機やRCを絡めた実時間高性能センシングの研究を複数のプラットフォームにおいて行う。次にclose-loopの研究に関しては、中央大学との共同研究を引き続き行い、PRCを活用した蠕動ロボットの自律制御やその他の共同研究を通して新たなソフトロボットの自律制御を目指す。
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Research Products
(22 results)