2019 Fiscal Year Annual Research Report
古代人ゲノム配列解析にもとづくヤポネシア人進化の解明
Project Area | Deciphering Origin and Establishment of Japonesians mainly based on genome sequence data |
Project/Area Number |
18H05507
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 謙一 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 研究調整役 (30131923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 丈寛 金沢大学, 医学系, 助教 (10558026)
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
角田 恒雄 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (80446575)
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (80734912)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 古代DNA解析 / 核ゲノム / ミトコンドリアDNA / 縄文人 / 渡来系弥生人 / 西北九州弥生人 / 古墳時代人 / 次世代シークエンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度行った縄文人のゲノム解析の成果の一部を本年に論文発表した。また同時に、得られたSNPデータからこの人物の形質の特徴を抽出して復顔像を作成し、プレス発表を行った。このニュースは多くのマスコミの取り上げられ、大きな反響があった。北部九州と南西諸島の縄文時代相当期の人骨の持つミトコンドリアDNAの分析を進め,両者が1万年ほど前に分離した集団である可能性があることを明らかにし、沖縄で行われた学会で発表を行った。 更に、初年度の分析で縄文人のゲノム解析に関してある程度の成果を得たので,本年は日本人の成立を考える上で重要な,弥生時代人骨を中心にゲノム解析を進めた。縄文人の末裔と考えられている西北九州の弥生人のゲノム解析によって,彼らが既に渡来系集団と混血した集団であることを明らかにし,論文発表した。また,渡来系集団の起源地と考えられる韓国の6千年前の貝塚人骨である加徳島の新石器時代の遺跡から出土人骨のゲノム解析を行い,彼らが現代の韓国人よりも縄文的な要素を多く持っていることを見いだし報告した。更に渡来人の遺伝的な特徴を更に詳しく知るために,弥生相当期に当たる韓国の人骨の分析を進めている。 日本国内でも渡来系とされる弥生人集団のゲノム解析を進めた。特に大量の人骨が出土した弥生時代後期の鳥取県青谷上寺地遺跡から出土した人骨について,網羅的な解析を行った。その結果,彼らの遺伝的な特徴は現代日本人の範疇に入るものの,多様性は大きいことが判明した。 このほか,全国の大学研究機関や埋蔵文化財センターに所蔵されている縄文~古墳時代人骨を収集し,ミトコンドリアDNAの分析を進めた。更にその中でDNAの保存状態の良い個体については核ゲノムの解析も実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、縄文人ゲノムを現代人のレベルで解析した論文を発表できた。その成果は、多くのマスコミにも取り上げられ、一般にも広く周知が出来た。研究成果の公表し、本科研の意義を一般に知らせるという意味では、科研費2年目の成果として充分な効果を挙げることができたと考えている。また、弥生時代人骨を広範に分析したことで、彼らの地域差が大きいことも明らかになった。更に、まだ分析例は少ないものの、各地の古墳時代人のゲノム解析から,古墳によって埋葬者の遺伝的な特徴が大きく異なっていることも示唆されている。これは,従来の様に弥生人や古墳人を特定の遺伝的な特徴を持った集団と捉えることは,日本人の形成を考える際にミスリードを生むことを示している。時間と地域を拡大して,その実態を把握することが重要である。このように弥生から古墳時代にかけて列島集団の遺伝的な性格が大きく変化したことを反映した現象を捉えたことで、今後3年間の分析の方針を設定することができた。 従来、古人骨の研究は大学が保管する人骨を対象に行われてきた。しかし、実際には発掘された多くの人骨は埋蔵文化財センターなどの地方自治体が所有している。本科研では B01考古班との共同研究を行っており、収蔵人骨の情報を持つ考古学者が策定したサンプリング計画に従って,試料収集を進めている。そのため本年は、従来は見逃されていた地域・時代の人骨を数多く収集し、分析をすることができた。従来、空白だった地域の人骨も収集できており、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き、各地の縄文~古墳時代に掛けての人骨の分析を進め、日本人形成のシナリオを詳細なものにしていく予定である。サンプリングについては、昨年度まででかなりの数を収集し終えている。本年は新型ウィルスの流行によって、出張しての調査やサンプリングが大きく制限されることが予想されるが、過去2年間に研究計画に充分な数のサンプルを収集しており、それを分析することができるので、今年度の計画に支障はないと考えている。 本年度は,特に古墳時代人骨の分析に力を入れる予定である。基層集団である縄文系の人々と大陸から取らした集団との混合がどの時代に完成するのか、あるいは古墳による遺伝的な違いがどのようなものなのか、更には同一の古墳に埋葬された人々の血縁関係はどのようなものなのかを明らかにする。これらの情報を考古学的な知見と併せて解析することで、その実態を明らかにする予定である。従来は副葬品などの考古学的な証拠によって考察されてきた古墳時代の社会を,遺伝子データによって検証することを目指す。 分析する人骨の選定とサンプリング、発掘情報の収集は研究代表者の篠田が行う。安達・角田の所属する山梨大学でDNA抽出を行い、次世代シークエンサ(NGS)で解析可能と判断したサンプルは、国立科学博物館で神澤がライブラリを作成した後、外注するか国立科学博物館でゲノムデータを取得する。データの解析は、遺伝研のコンピュータを使い、遺伝研(A01班)や金沢大学で行う。
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Research Products
(16 results)