Research Abstract |
早稲田チームは, 従来実施してきた株式市場実験, テークオーバー実験, 不動産取引実験に関する論文の総仕上げを行った. とりわけ, 株式市場におけるノイズ・トレーダー(不完全な情報しか持ち合わせていないトレーダー)の役割を詳細に検討した. 従来, インフォームド・トレーダーがいる限り, 情報バイアスを持つノイズ・トレーダーが存在しても, ファンダメンタルズをよく知るインフォームド・トレーダーによる裁定取引でノイズ・トレーダーの影響を除去できると信じられてきたが, 一連の実験研究でそうではないことを発見している. この研究から, 実際の金融市場における価格変動の主要要因はノイズ・トレーダーのビリーフであるとの含意を得ている. 信州チームは, 同じ財を複数単位取引するオークションに注目する研究をほぼ完成させている. 自主流通米入札市場で過去に実施されたオークションルールにおいて, 一連の実験研究で, 「Demand Reduction」の現象を数多く観測している. 被験者が利得情報以外の情報にも反応するという新たなモデルを構築し, 実験にてそれを確認している. 大阪チームは, 市場そのものを公共財としてとらえ, そのような公共財がなぜ供給されるのかに焦点をあてる. アダム・スミスは「共感」の背後にある「アプルーバル」に着目しているが, そのアイデアをもとにアプルーバル・メカニズムを設計し, その性能を実験室にて検証している. 被験者の行動原理が自己利得の最大化のみならず, 互恵性, 不平等回避行動などでも機能することを発見し, 被験者実験でも90%を超える協力率を観測している. 公共財供給においても, ミニマム・アプルーバル・メカニズムは理論でも実験でもパレート効率性を達成することを確認している. 平成24年度の繰り越し分では, 危険回避度の測定, 公共財供給メカニズムの実験, 異時点間の資源配分実験を実施した.
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