Research Abstract |
本研究課題では,大規模電子状態計算法,古典分子動力学法,粗視化粒子法,Phase-field法,ならびに異なる計算手法のハイブリッド化技術を高度化・汎用化させ,さらにそれらをシームレスに統合することにより,ナノ領域に局在する機能元素がマクロ物性に及ぼす影響を定量的に予測する新たな計算材料科学パラダイムの構築を目指した。 平成23年度の実績概要 本課題で開発を目標とした計算手法の基盤形成の多くを昨年度までに達成し,最終年度である本年度では残る課題解決に向けた取り組み,ならびに領域内連携の推進,さらに光応答などの新しい計算手法開発にも着手した。個々のスケール・メンバーにおける成果は下記の通り: ・大規模分子動力学計算とハイブリッド密度汎関数法/古典分子動力学計算手法の高度化により,領域内共通試料であるアルミナ中の転位芯とその分解過程を含む大規模構造の電子状態解析および,熱的安定性を解析した。 また,電子顕微鏡観測データとの詳細な比較を行ない,その成果についての論文を執筆中である。 ・これまで解析してきた材料の力学的特性や電子状態などの静的な特性解析に加え,材料の光応答特性への機能元素効果の解析・設計にも着手すべく,有機太陽電池用ナノ構造体の光吸収特性へドーパント効果を,時間依存密度汎関数法により解析し,吸収スペクトルのブロード化による効率向上の可能性を示した。 ・昨年度までに達成した粗視化粒子法の多階層化・ハイブリッド化の手法開発と亀裂伝搬過程などの動的事象解析,ならびに実材料(グラフェン)への適用をさらに進め,グラフェンのナノインデンテーション特性に適用した。 ・これまで達成してきたPhase-field法の拡張・高度化をさらに推進し,粒界偏析現象の時間発展を定量的に再現する理論的・計算科学的枠組みを構築し,本領域内共通試料のアルミナ中粒界への機能元素偏析の動的過程の再現に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初目標は,様々な物理スケールに対する計算科学手法の高度化と融合,領域内連携による実験的実証であった。究極の目標であるA~ミクロンまでの3スケール以上に跨る計算手法の開発には到達しなかったが,各スケールでの高度化,2スケール間ハイブリッド化,ならびに領域連携による共通試料の機能元素効果解析は実施できた。よって,本研究課題はおおむね順調に進展したと自己評価する。
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