2020 Fiscal Year Annual Research Report
人と社会的に共生する対話システムのための行動決定モデル基盤技術の確立
Project Area | Studies on intelligent systems for dialogue toward the human-machine symbiotic society |
Project/Area Number |
19H05693
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
杉山 弘晃 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, 主任研究員 (30742283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 浩 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10232282)
中村 泰 大阪大学, 基礎工学研究科, 招へい教授 (70403334)
前田 英作 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (90396143)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 深層学習ベース大規模対話モデル / 人の選択過程のモデル化 / 高密度趣味雑談コーパス / 長期テキストチャットコーパス / 3者間テキストチャットコーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
人から信頼を獲得する対話システムを実現するため、人とシステムの価値判断モデルを軸に、以下のA~Cの3つの研究課題に取り組んでいる。 課題A. システムの価値判断モデルに基づいて一貫性のある発話生成を実現する技術の確立:NTTの杉山は、日本語最大規模の深層学習に基づく対話システムを構築し、未知の事象(例:コロナウィルス・未知の小説等)に対しても、システム自身がそれまでに表出していた嗜好(価値判断)との一貫した発話を生成できることを確認している。また、東京電機大の前田は発話生成時に参照すべき知識を自己判断するモデルを構築しており、上記対話システムとの組み合わせを進めている。 課題B. 発話履歴から人の価値判断モデルを推定する技術の確立:理研の中村と大阪大学の石黒は、人の選択の過程をdot-product attentionモデルに基づいて推定する手法を開発し、選択肢を提示する方法で、特定の状況における人の嗜好の収集と評価基準の抽出・推定が可能なことを確認した。NTTの杉山は、趣味についての雑談を高密度に収集したコーパスを収集し、上記大規模対話システムに適用することで、一般的な社会通念(ポライトネス)に配慮した形で人の趣味について聞き出しつつ雑談を行えることを確認している。 課題C. 人・システム共生社会における人・システム間の関係認識:NTTの杉山・有本は、人間関係の深化の分析を行うためのデータとして、2か月間に渡る長期テキストチャットデータを収集している。その初期分析として、人間関係の進展に伴う、対話の話題や対話行為の出現頻度、発話スタイルの変化を明らかにしている。さらに、3者間テキストチャットデータを収集し、3項関係での人間関係の深まりについて分析している。東京電機大の前田は、人の対話への期待度を制御する「猫かぶり対話ロボット」を提案し、コンセプトの検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、課題Aでは、短い対話内においてシステム自身の価値判断に基づく一貫した対話を生成できている。課題Bでは、選択肢対話条件において、対話を通した人の嗜好の収集や価値判断モデルの推定を実現した。また、人の視線動作のモデル化の初期検討を行った。課題Cでは、人間関係の分析に用いる基礎データを収集し、人間関係のモデル化の検証を進めている。進捗は計画通り順調に推移しているため、引き続き各課題に取り組みつつ、対話サービスの構築と実証実験を行う。 なお、応募時点では、雑談対話システム研究においてはルールベースと深層学習ベースの方法が性能的に拮抗しており、それらをうまく使い分ける方向で計画していた。しかし、この1年間で急激に深層学習に基づく対話システムの性能が向上し、ルールベースとの乖離が大きくなったため、基本的に深層学習ベースの方法の検討を軸に進める。深層学習ベースの方法は多大な計算コストと超大規模な学習用データを必要とするが、研究代表者は当該年度の研究において、英語圏に匹敵する規模の日本語最大の深層学習ベース対話モデルを構築しており、本研究においてもいち早く活用を進めているため、研究推進上の支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
課題A. システムの価値判断モデルに基づいて一貫した発話生成を実現する技術の確立:深層学習ベースの対話モデルで問題となっている一貫性・事実性の担保について、含意関係認識を発話生成に導入することで、長い対話であっても個人ごとに一貫性を担保する手法を検討する。 また、価値判断の根拠とする知識の自律選択までは実現できているため、より根本の、深層学習ベース対話モデル本体の継続学習に取り組む。さらに、ある人に予測される反応が好ましいものとなるよう、システムが行うべき発話を決定するモデルの実装・検証を進める。 課題B. 発話履歴から人の価値判断モデルを推定する技術の確立:単一の物や事柄の選好について、選択肢対話条件・初対面対話条件で実現している。これを実対話・非初対面に拡張していくとともに、複数の情報の組み合わせで構成される概念に対する選好モデルについて検討を進める。また、人の印象予測に基づく応答生成の実装を進める。合わせて、対話時の人の視線動作の認識および対話内容と連動した深い模倣を行うモデルの検討を行う。 課題C. 人・システム共生社会における人・システム間の関係認識:長期テキストチャットについて、対話内で共有された情報と、話者が相互に認識している人間関係の間の関係性について分析し、「深い」人間関係とはどのような状態であるのかを明らかにする。合わせて、長期テキストチャットデータを利用し、課題A・Bの成果と組み合わせることで、人と同様に人間関係を深めていくモデルの実現に取り組む。3者チャットを分析・利用することで、2者間の人間関係との差異分析、および3項以上の人間関係のモデル化・推定に取り組む。 上記をアンドロイドERICAやCommUに実装し、被験者実験および実証実験を行う。モデル・データの公開を積極的に進めることで、日本の対話システム研究分野の活性化および世界的な地位の向上につなげる。
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Research Products
(12 results)