2020 Fiscal Year Annual Research Report
Direct Search for Dark Matter with High-Sensitivity Large-Scale Detectors
| Project Area | Unraveling the History of the Universe and Matter Evolution with Underground Physics |
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| Project/Area Number |
19H05805
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50313044)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 雅樹 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任准教授 (10504574)
安部 航 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (30401285)
風間 慎吾 名古屋大学, 高等研究院(素粒子), 特任助教 (40736592)
中村 正吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50212098)
MARTENS Kai 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (20535025)
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| Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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| Keywords | ダークマター / 暗黒物質 / 中性子検出 / ガドリニウム / 低バックグラウンド / キセノン |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究では、国際共同実験XENONnTにおいて、暗黒物質と核子の散乱断面積2×10-48cm2を達成し、大発見を目指す。そのために実験における究極のノイズとなる中性子の存在を同定するため、本領域内の連携を活かし検出器で信号が得られた時に中性子が存在したかどうかを記録し排除することが必須である。具体的にはスーパーカミオカンデグループが開発した中性子検出の技術を応用する。本領域の低バックグラウンド技術と連携を活かし、放射性不純物が少なく純度の極めて高い硫酸ガドリニウムを調達し、XENONnTの中性子検出器に導入し、運転を行う。本年度は以下の重要な進捗があった。
(1)予備の硫酸ガドリニウム150kgを入手し試運転の準備を行った。（2）中性子検出器を純水にて運転を開始し、調整と性能評価を行った。(3)XENONnT検出器のTPCの運転と液体キセノンの純化を開始したところ、TPCにおける電子寿命が7ミリ秒にも達し、世界最高の純度を達成できた。(4)水中の光の透過率を測定するための装置を現地に導入し、試運転を行った。(5)硫酸ガドリニウムを溶解した水の純化装置の調達を開始し、スローコントロールの設計と調達を行った。 (6)不純物を除去するフィルタ材を調達した。その他(7)硫酸ガドリニウムを溶解させる際に必要な粉体移送装置を調達した。特筆すべき成果として、(8) XENON1Tのデータ解析によって、電子反跳を起こす未知の現象が有意に観測され、大きな反響を得た。他にも様々な物理現象に関する論文を出版した。
その他、(9)XMASSのデータ解析、特にニュートリノの標準理論を超えた相互作用の探索に関する論文、(10)石英容器を基にした将来の低バックグラウンド検出器開発の論文、(11)新型光センサーMPPCの低ノイズ化の論文の出版に成功し、(12)液体キセノンからの近赤外光の検出準備を行った。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍にも関わらず、年度当初に予定した計画以上の進展が得られた。特にXENONnT検出器のTPC及び中性子検出器の建設を完了し、コミッショニングを開始することができたのは世界初の発見を目指す上では重要な進展である。いよいよ硫酸ガドリニウムを導入し長期データの取得が可能となった。また、XMASSのデータ解析の結果は順調に出版が行われ、将来へ向けた研究開発も順調に進展が見られた。
並行してXENON1Tのデータ解析にも取り組み、電子反跳による未知の信号の探索にも貢献してきた。特に本研究テーマは研究代表者が大学院生時代より取り組んできた太陽アクシオンに関する研究でもあり、データ解析と論文執筆に大きな貢献を果たすことができた。研究では３種類の信号を独立にフィットして探索することにより、信号が発見された場合にはアクシオン模型に対する情報が得られる手法を導入することや、バックグラウンドにおける不定性の評価に対する貢献などを行ってきた。特に信号の一つは、研究代表者が評価した太陽中の57Feの脱励起によって生じる可能性のある信号を扱っている。
これらは研究代表者が代表を務めるXMASS実験グループが以前より注目して研究してきた電子反跳による未知信号の探索の経験が生かされている。本年度に発表したXMASSの論文はニュートリノの未知の相互作用を探索したものであるが、ニュートリノのそれぞれの種類に対するミリチャージへの実験的な世界一厳しい制限を与えることができた。将来の検出器の研究開発の成果も論文として出版することができた。
このように、期待以上の進展が得られる結果となった。
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| Strategy for Future Research Activity |
XENONnT検出器で暗黒物質等の探索データを取得し、物理成果を出す。特に未知の電子反跳現象に対して、XENON1Tとは異なる新たなXENONnT検出器により、バックグラウンドのより低いデータが得られると期待できるため、数ヶ月のデータで統計的に有意にXENON1Tでの結果を排除するか確認できるかが大きな興味を引いている。
中性子検出器の純化装置を運転開始し、硫酸ガドリニウムを用いた中性子検出器の運転を開始する。中性子源等を用いた検出器の較正作業を通じて性能を十分に理解する。そして長期データを得ることにより当初目的である暗黒物質と核子の散乱断面積2×10-48cm2を達成できる感度の実現へ向けてデータ解析を行う。
XMASSの全データ解析の完了へ向け研究活動を続け、１相型液体キセノン検出器での世界最高の暗黒物質の探索結果を得る。将来の検出器に用いることのできるMPPC等をこれまでより低バックグラウンド化することや、検出器からの新たな信号のチャンネルの発見を目指す。
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| Remarks |
本年度に発表した論文"Excess electronic recoil events in XENON1T"に対する大きな反響があった。マスコミ（産経新聞、産経ニュース、共同通信、日経新聞、朝日新聞他）にも多数取り上げられ、研究論文もSPIRES HEPによると250近い引用が行われてきた。社会的にも本研究分野をアピールすることができた。
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