2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵子による核の初期化機構の解明およびその促進方法の開発
Project Area | The germline: its developmental cycle and epigenome network |
Project/Area Number |
20062015
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
若山 照彦 独立行政法人理化学研究所, ゲノム・リプログラミング研究チーム, チームリーダー (40360672)
|
Keywords | 応用動物 / 再生医学 / 獣医学 / 畜産学 / 発生・分化 |
Research Abstract |
本研究は卵子による核の初期化機構の解明を目指すと同時に初期化の促進方法を開発し、体細胞核の完全初期化およびクローン動物特有の異常が生じない、正常な個体を高率に作出することを目指している。2010年度には1.クローン動物特異的なエピゲノム異常を様々なHDACiによって修正し成功率を高める試みを行った。その結果、成功率のさらなる改善は出来なかったが、クラスIIbのHDACを抑えることが重要だということが明らかとなった。またiPS細胞の作製には効果があると報告されたHDACiのバルプロ酸は全く効果が無く、クローンとiPS細胞の作成には異なるリプログラム機構があることが示された(Ono, et al., 2010)。2.TSAでクローン動物の成功率は改善されるが、そのメカニズムはよくわかっていなかった。そこでTSA処理後にどのような変化が起こっているのか初期胚を観察した結果、TSA処理によってクローン胚の染色体の脱凝縮は未処理胚より進み、ヒストンのアセチル化は促進されていた。そして2細胞期において、未処理区では割球間で不均等な新生RNAが観察されたが、TSA処理によって受精卵と同様に割球同士が同期しながらRNAの合成を行うようになった(Bui, et al., 2010、雑誌の表紙に選ばれた)。3.単為発生胚由来のES細胞を核移植することでインプリント遺伝子の改変を試みた。その結果、核移植操作を繰り返すことで単為発生胎児の死亡時期は延びたが、核移植による初期化には限界があることが示された。一方、単為発生由来胚から正常な機能を有する胎盤を作ることに成功した。この研究によって、これまで単為発生胚は胎盤が形成できないため致死だと言われていたが、胎盤より胎児自身に致死の原因があることが明らかとなった(Hikichi, et al 2010)。
|