2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
20110002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿野田 一司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20194946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 利宏 学習院大学, 理学部, 教授 (60163276)
鈴村 順三 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90108449)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / 低温物性 / 半導体物性 / 分子性固体 |
Research Abstract |
鹿野田:α-ET213の加圧下Dirac電子相において伝導面垂直に磁場を印加した状態でNMR実験を行いゼロモードLandau準位とスピン分裂、更には15Tの磁場下で新たな電子相を示唆する結果を得た。一連の単一分子種伝導体における多軌道効果を明らかにするため13C NMRスペクトルの解析により、スピン磁化率をπ軌道成分とdpσ軌道成分に分割することに成功した。三角格子電荷秩序系で電荷秩序の前駆現象と考えられるノイズの検出に成功した。 高橋:ゼロギャップ系物質a-ET213に圧力を印可し13C核NMR実験を行った。これまで得られた結果を検討し、更に高い圧力を印可した実験を行い、単位胞内各分子の局所磁化率を見積り常磁性相での局所磁化率が低温で下に凸の温度依存を示すことを確認した。TMTSF2FSO3でSe核NMRの結果を踏まえて、これまで行なってきたF核NMR吸収線測定に加えNMR緩和率測定を行った。電気抵抗とx線に異常がある温度で緩和率の異常が観測された。陰イオン整列に伴い分子運動の挙動が変化すること、それが伝導特性に反映されることを示唆する結果を得た。 鈴村:α-(ET)2NH4(SCN)4に1軸圧を加えるとゼロギャップ状態が出現する可能性およびα-(ET)213のストライプ電荷秩序相(圧力下)において圧力増加により質量有限のディラック電子対が出現することを示した。同物質の傾斜ディラックコーンにおける動的誘電応答を長距離クーロン相互作用のRPAにより計算し等方的ディラックコーンには存在しない新たなプラズモン等を見出した。有機導体のゼロギャップ状態をベリー位相を用いて解析した。分子内電荷秩序および分子内反強磁性状態の実現が指摘されている (TTM-TTP)13および[Au(tmdt)2]の多軌道有効モデルを第一原理計算より導出しフラグメント軌道の描像が正当化されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特にゼロギャップ伝導体について、理論的に強磁場中で予言された新しい電子相の存在を示唆する実験結果を得たこと、また、逆に当初の理論計算と異なりエネルギーおよびk-空間に強く依存するバンド分散が実験的に得られたことが、理論研究を刺激し、電子相関効果の繰り込み効果の研究へと発展している。中性-イオン性転移系においては、異方的加圧により、その伝導体化の兆候が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、実験グループと理論グループが連携して、分子配列自由度が創る新しい電子相の探索を行い、物質科学としての体系化を図る。具体的には次のように研究を進める。i)一軸性加圧により電子/格子系の異方性を制御するし、三角格子ドープ系における新規スピン/電荷状態を探索するとともに、交互積層分子配列を持つ誘電物質から分離積層型の伝導体への変換の可能性を探る。ii)バルク物質でゼロギャップが実現しているa-ET213と同型構造のa-BETS213のNMR実験を行い、類似塩を含めたこの系の電子状態の解明を目指す。iii)分子性ゼロギャップ伝導体の電子物性を理論的に明らかにするため、電荷秩序相-半金属相との競合の際のゼロギャップ状態安定化、低エネルギー状態密度の抑制、単位胞内に4個の分子を含むディラック電子系に特有の内部自由度のもたらす現象を研究する。
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