2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
20110007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 初果 東京大学, 物性研究所, 教授 (00334342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 順一 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (90191311)
西川 浩之 茨城大学, 理学部, 教授 (40264585)
黒木 和彦 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 教授 (10242091)
高橋 一志 神戸大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60342953)
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Keywords | 分子性物質 / 電荷秩序 / 外場応答 / キラル伝導体 / プロトン-電子相関系 / 伝導性金属錯体 / 電場応答 / 第1原理計算 |
Research Abstract |
(森研究代表者チーム)プロトン-電子相関系伝導体κ-H_3(Cat-EDT-TTF)_2およびその重水素体を作成し、共に純有機単成分の伝導体であること、100Kまでの構造、伝導性は類似しているが、それ以下で磁性の振る舞い、および基底状態は大きく異なり、プロトンと電子がカップルした系であることを明らかにした。 (山田分担者チーム)圧力有機超伝導体β-(BDA-TTP)_2I_3に様々な方向から一軸圧を印加することにより、二つの競合する電子状態を見出し、さらに有効電子相関を考慮しながら圧力を調整すると、超伝導転移温度を制御できることを見出した。また、ジメチル基を有するキラルな新規TTFドナーの合成に成功し、MI転移や低温領域で電気抵抗の上昇を示す電荷移動塩を見出した。 (西川分担者チーム)配位子に酸化還元活性なTTF部位を導入した多核金属錯体の合成に成功した。配位部位としてピラゾール導入したTTF-配位子を合成し、Fe(II)、Fe(III)、Ni(II)からなるキューブ錯体を合成するとともに、この錯体に長鎖アルキル基を導入することにより、溶媒、温度によってゲル化することを見出した。また、縮小π電子系ドナーであるDODHTのAsF_6塩の電荷秩序相を解明した。 (黒木分担者チーム)β-(BDA-TTP)_2MF_6(M=P,As,Sb,Ta)の第一原理バンド計算を行い、有効強束縛模型を構築した。その結果、これまで得られていた拡張ヒュッケル法によるフェルミ面とは異なる異方性を持つフェルミ面を得て、実験結果との関係を議論した。さらに、この模型を用いてアニオンの違いによる電子状態の違いを議論し、スピン揺らぎ媒介ペアリングを仮定して、転移温度の違いに対する定性的な説明を与えた。さらに、ペアリング対称性についても考察を行いつつある。 (高橋分担者チーム)鉄スピンクロスオーバーカチオンを有するコバルトフタロシアニン錯体を合成し、溶媒分子の脱離後の錯体の ^<57>Feメスバウアースペクトルが非常に高い温度(150K)以下での磁気分裂を示すことを見出した。この磁気分裂のメカニズムに対して、結晶構造と電子状態について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子の自由度の開拓ということで、(1)電子とプロトンが相関する有機伝導体の開発、(2)キラル伝導体の開発、(3)固体の電子相関を構成成分であるドナー分子の化学修飾で制御した有機伝導体の開発、(4)多核金属錯体の開発、(5)電荷秩序と競合する有機超伝導体の開発、(6)磁気秩序を有する鉄スピンクロスオーバー錯体など、分子の機能性を、分子集合体である結晶の物性に展開した分子性物質の合成、物性測定に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述11(1)については、構成成分であるカテコールドナーとそれを用いた単一成分伝導体の大型単結晶を作成することが課題で、トルク測定で0.3K以下でのスピン液体の可能性を追求し、その原因がプロトントンネリングやそれと相関したダイマー内の電荷の自由度であるかを誘電応答測定で調べる必要がある。また、重水素体の大型単結晶を育成し、常圧での相転移を調べ、電池で極性を反転させながら結晶構造を調べ、電子強誘電性の可能性を探る必要がある。(2)は、キラルアニオンを用いて、ラセミドナーと電荷移動錯体を作成することが課題で、キラルセレクションが起こるのか、また、キラルアニオンとキラルドナーの組み合わせで特異な電子状態が創出されるのかを調べる予定である。
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Research Products
(90 results)