2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゆらぎを積極的に利用するナノ情報処理システムの開拓
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
20111004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浅井 哲也 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (00312380)
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Keywords | 集積回路 / 雑音・ゆらぎ / 分子ナノデバイス / 情報処理 / 確率共鳴 / 生体模倣 / 自己組織化 |
Research Abstract |
現在の電子システムは、雑音やゆらぎの要素(システムの誤動作を招く障害要素)を極力排除するよう設計されている。一方、生物は雑音を巧く利用して情報処理を行うと考えられている。本研究の目的は、熱雑音に鋭敏な単電子素子を用いて、熱雑音を有効利用する新しい情報処理方式を開拓することにある。平成23年度は、AO4が試作した有機単電子デバイス/確率共鳴素子のモデル解析を行い、実デバイスの非線形IV特性とのフィッティングを試みた。 二次元有機単電子デバイスのモデルとしてトンネル接合のアレイ構造を仮定し、単電子モンテカルロシミュレーションを行った。また、回路構造もパラメータとして考え、近接完全結合および一次元結合モデルのアレイを用いてシミュレーションを行った。北大で過去に試作された量子ナノ構造の素子パラメータ(トンネル接合容量:10aF,トンネル抵抗:1MΩ)を用いた場合、素子を流れる電流Iは両端電圧Vのほぼ2.5乗に比例し、実験結果と合致した。しかし、有機単分子ネットワークから抽出したトンネル接合容量およびトンネル抵抗を用いた場合、一次元結合モデルの構造ではIV特性は立ち上がり後ほぼ線形となった。そこで、トンネル接合容量が異なる一次元ネットワークのIV特性を重ね合わせたものが実デバイスの特性になるのではないかと考え、より現実的な系として、トンネル接合容量のバラツキおよび二次元格子の欠陥を導入した系のシミュレーションを行った。その結果、予想どおりIがVのほぼ2乗(1.6~1.9)に比例する結果が得られ、実験値に近い値が得られた。このシミュレーション結果をもとに今後、確率共鳴素子の数値解析とその情報処理応用の検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゆらぎ利用情報処理アーキテクチャのCMOS集積回路上での実証,および単電子回路上でのデモンストレーションに関する問題は生じなかった。しかし、提唱した基本アーキテクチャをそのままの形で分子ナノシステム上に展開することが困難であった。ただし、既存CMOSプロセスの10%程度の配線制御が可能であれば、提唱したアーキテクチャの分子デバイス化が可能である。また、AO4班との連携により、既存分子ナノプロセスの様々な制約が明らかになったため、今後もプロセス上の制限を考慮した上で、提唱したアーキテクチャの一部改良を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
分子ナノシステム上で確率共鳴素子を用いた微弱信号検出およびメモリ素子動作実証を行う。確率共鳴メモリについては、双安定性を持つダイナミックな系(FitzHugh R. Bull. Math. Biophysics, vol.17, pp.257-278,1955,など)を単分子トランジスタにより構成し、シミュレーションおよび実験によりその動作と有効性を実証する(単分子トランジスタの試作評価はAO4班において完了)。 また、AO4班のカーボンナノチューブ+負正抵抗素子(CNT+POM)を用いて、信号伝送路に関するシミュレーション評価を行う。また、位相同期については、分子ナノシステムによる振動子の実装が困難であることが予測されたが、分子システムそのものが持つリズム性を利用したデモンストレーションができる見通しが立っている(参考文献:吉川研一著,非線形科学一分子集合体のリズムとかたち,学会出版センター,1992)が、実験が(時間的制約により)不可能な場合は、そのモデルを用いた雑音誘起位相同期のシミュレーション評価を行う予定である。
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Research Products
(14 results)