Research Abstract |
実験圃場およびポット栽培のイネを用いて,ブランチエンクロージャー法により,リナロール,2種類のセスキテルペンおよび2-エチルヘキサノールを同定し,その放出速度は少量であるが,アジアのイネの栽培面積を考慮すると総放出量としては高いことが分かった.可搬型簡易渦集積装置を用いて,富士吉田のカラマツ林で夏・秋季のイソプレンとモノテルペンのフラックスを計測し,日変動パターンと両季節のBVOCフラックスの特性を明らかにした.枝チェンバー法で日本の主要針葉樹のBVOC放出量を測定し,各樹種のモノテルペン基礎放出速度を算出した.また,エゾマツはイソプレンを放出することが分かった. リセプタとして九州,関西,関東地域におけるオゾン及び硝酸塩粒子濃度に及ぼす中国の前駆物質(NOx,NMVOC)排出6部門の影響を,前駆物質排出量を段階的に削減させるエミッション感度法による大気輸送シミュレーションから1月と7月について検討した.中国の全NOx排出量を0としたときの日本の各リセプタにおける平均オゾン濃度は7月に~15%程度の減少,1月にはほぼ0か,わずかに正の値をとった.一方,硝酸塩濃度は両月とも20~50%減少し発電部門の影響が大きいことが分かった.また,NMVOCの消減ではNOxのようなリセプタ濃度の大きな減少や類似の傾向は認められなかった. 2000年度アジア国際産業連関表から国連貿易統計などのデータを用いて産業連関表を2005,2008年に拡張し,黒色炭素(BC)及び有機炭素(OC)粒子の排出構造分析を行った.各国の最終需要を満たすために,他国に誘発したBC排出量と他国からの誘発量を比較すると,日米やNIESは他国への誘発量が他国からの誘発量より多いが,中国では逆転し2000年と2005年では2つの誘発量の差の絶対値が大きく増加した.また,中国を除く9ヶ国の最終需要が中国に誘発したBC,OC量と自国への誘発量の比の経年変化から2000年と2005年で顕著な変化が認められた.
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