2011 Fiscal Year Annual Research Report
ライダーおよび地上モニタリングネットワークによるエアロゾル動態解明
Project Area | Impacts of aerosols in East Asia on plants and human health |
Project/Area Number |
20120006
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
杉本 伸夫 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 室長 (90132852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 智明 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (10462491)
直江 寛明 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (70354511)
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Keywords | エアロゾル / ライダー / 観測ネットワーク / 光学式粒子計数器 / 山岳観測 / 黄砂 / 大気汚染 / 越境大気汚染 |
Research Abstract |
前年度までに本研究で整備したつくば、辺戸岬、ソウル、福江島、松江、タイ国ピマイのラマン散乱測定を含む東アジアのライダーネットワーク(全20地点)により、エアロゾルの分布と動態を通年連続して観測した。ラマン散乱から得られる消散係数と2波長の後方散乱係数、1波長の偏光解消度からエアロゾル種(硫酸エアロゾル、海塩、黄砂、ブラックカーボン)を分離して、それぞれの分布を導出した。一方、山岳域(北アルプス新穂高岳、中央アルプス駒ヶ岳、榛名山)において光学式粒子計数器(OPC)によるエアロゾルの通年観測を行った。また、エアロゾルの採取も行い、電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線解析装置による解析を行った。さらに、粒子毎に散乱強度と偏光特性を測定する偏光OPCを整備し、福岡と松江で観測を開始した。 ライダーネットワーク、山岳観測および既存の地上モニタリングネットワークにより中国大陸から輸送されるエアロゾルの立体構造が捉えられた。事例解析の結果、大気汚染性エアロゾルと黄砂の混合や、輸送における山岳の影響、上空を輸送される黄砂の混合層活動による地上へ輸送などが明らかにされた。また、電顕解析では内部混合したエアロゾルが高い頻度で観測された。 一方、ライダーから得られる黄砂と大気汚染性エアロゾルの消散係数を健康影響研究に提供するとともに、光学的なパラメータ(消散係数)と重量濃度の関係について(A02-P06課題と連携して)検討した。その結果、黄砂消散係数はPM2.5中のFe濃度と良い相関があり、黄砂消散係数がPM2.5の黄砂成分と良い相関を持つことが実証された。これによって、黄砂消散係数が健康影響における黄砂の指標のひとつとして妥当であることが裏づけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたライダーネットワークと山岳におけるモニタリング観測を中心とするエアロゾル動態の立体的な把握とラマン散乱ライダーによるエアロゾル種毎の分布の把握に加えて、山岳におけるエアロゾル採取と電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線解析装置によるエアロゾルの内部混合状態の研究が進展した。これと並行して、ライダーデータの健康影響への利用が進み、そのなかで黄砂と大気汚染エアロゾルの混合状態が重要であることを示唆する結果が得られた。一方、偏光粒子計数器(偏光OPC)とそのデータ解析手法の開発を行い、内部混合を含む、黄砂と大気汚染エアロゾルの混合状態のモニタリング手法となる可能性が示された。偏光OPC観測と電子顕微鏡解析を用いて、黄砂と大気汚染エアロゾルとの混合状態を含めた光学モデルの改良や、これを用いたライダー解析手法の改良が可能となり、混合状態を含めた健康影響研究への展開の見通しが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ラマン散乱を含むライダーネットワーク、山岳におけるモニタリング観測、エアロゾル採取と電顕、エネルギー分散型X線解析、偏光OPCによる観測を継続し、エアロゾルの3次元的な輸送、エアロゾル種毎の分布と動態、エアロゾルの混合状態に関する解析を行う。これによって、エアロゾルの混合状態と光学特性の関係、ライダーで得られる消散係数と重量濃度との関係を明確にし、影響研究と連携して影響指標を検討する。また、東アジアスケールのエアロゾル混合状態解像モデルを用いて、煤粒子・ダスト粒子と微量気体との不均一反応による変質過程を調べるとともに、モデルの評価を行う。さらに、データ同化の可能性や同化モデルを用いた影響研究の可能性などについて考察し、研究成果をとりまとめる。
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Research Products
(21 results)