2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Coral Reef Science for Symbiosis and Coexistence of Human and Ecosystem under Combined Stresses |
Project/Area Number |
20121003
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 款 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (30252159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CASARETO Beatriz 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特任教授 (60402244)
藤村 弘行 琉球大学, 理学部, 准教授 (20398308)
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Keywords | 物質循環 / ミクロ生態系 / 有機物組成 / 無機金属 / 窒素固定 |
Research Abstract |
生態系の維持機構は物質循環に深く関連している。本計画研究では生物素過程と化学の素過程の緊密な融合を進めながら、複合ストレス下における人間・生態系・物質循環の複合共生系の応答と影響評価とその定量的評価システムの確立、及びミクロ生態系と物質循環との関係、化学共生と生物共生の複合的プロセスを解明することが目的である。 1、素過程と環境ストレス(水温・光強度、流速、栄養塩濃度、CO2濃度等)を制御し、サンゴおよびミクロスケールの生物群集の光合成量(=有機物生産量)、呼吸量、石灰化量、分解量等を測定するための装置を完成させた。2、基礎生産量の再評価のために、石垣島・瀬底島で5月・8月・9月の3回共同調査を行い、従来法による評価は過少評価していることを明確にした。3、サンゴの白化に関しては水温の上昇(主として30℃以上)に伴い、サンゴ内に共生する褐虫藻の光合成活性能が50%程度低下すること、また細胞そのものから色素を失うこと、サンゴの外に逃げ出す褐虫藻の量はサンゴ内の全体量の1%にも満たないこと、サンゴの白化はサンゴ内での色素を失うことを明らかにした。4、サンゴの胃腔中のバクテリアの細胞数は10(e7)/Lのオーダー、サンゴの外側の海水中のバクテリア数105/Lに比較してかなり高い。ビタミンB12の濃度もサンゴ内では100-700pMに対して、海水中では2-5pM、サンゴ内で高いということを明らかにした。5、世界で初めてのサンゴ内部の測定からサンゴの周りの海水に対してサンゴは半閉鎖系な振る舞いをしていることを明らかにした。6、沖縄だけでなく、タイおよびモーリシャスのサンゴ礁における基礎生産量の再評価を検討した。窒素固定量によるシアノバクテリアや、砂地の付着藻類による基礎生産量は、海水中の基礎生産量に比べて2倍以上高いことを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究概要に示したように、従来の「サンゴ礁やサンゴの動態」の定説を覆すような新たな成果を得ている。研究発表(学術論論文と国内外の発表)も順調で、世界的に新たな「サンゴ礁学」の」基盤を創成する成果を得ている。具体的には以下である。 1、サンゴ礁の基礎生産量の再構築と再評価ができた。サンゴ礁は本当に貧栄養海域かという問に新たな回答を与えることができる成果が得られた。 2、水温上昇と褐虫藻とバクテリアの増殖に関する関係と白化が起きるプロセスの明確化した。 3、環境ストレス下におけるサンゴの生命維持と物質循環との関係のより詳細な理解がサンゴの内部の初めての研究により明確になった。 4、ストレス下における複合共生理解のための化学共生の研究の重要性を明確化した。酵素、色素、抗酸化物質を指標とするサンゴの健康状態の定量化を促進した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、サンゴ礁における基礎生産者・窒素固定者を同定し、その種組成・バイオマス量(炭素・窒素量)の分布・変動を明確にする。サンゴ礁における消費量(呼吸量)と基礎生産量の収支を明確にする。サブ環境におけるピコ・ナノプランクトン、マイクロプランクトン、バクテリア、HNF,非生物粒子態有機物の炭素バイオマス量の相対的割合を明確にし、応答モデルに使えるようにパラメータ化する。 2、サンゴ内部のミクロセンサーおよび微量成分による素課程の研究・サンゴ内部の動態の研究:サンゴ内部循環とサンゴ・褐虫藻・バクテリアの複合共生システムおよびストレス応答との関係を明確にする。 3、有機化合物・酵素および色素とストレス応答におけるサンゴの健康状態の指標探索:サンゴの白化と病気の回復因子の解明。
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Research Products
(25 results)