2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Coral Reef Science for Symbiosis and Coexistence of Human and Ecosystem under Combined Stresses |
Project/Area Number |
20121005
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山口 徹 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90306887)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚橋 訓 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科(研究院), 教授 (50217098)
朽木 量 千葉商科大学, 政策情報学部, 准教授 (10383374)
吉田 俊爾 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (70081627)
深山 直子 東京経済大学, コミュニケーション学部, 専任講師 (90588451)
|
Keywords | サンゴ礁 / 景観史 / ジオアーケオロジー / 歴史人類学 / 物質文化研究 / 歴史生態学 / 八重山諸島石垣島 / アウトリーチ |
Research Abstract |
本研究では、歴史生態学の学際的な枠組みを基盤としつつ、サンゴ礁-人間系の動態的関係を通史的に把握することを目的に八重山諸島の石垣島を具体的な調査地として位置づける。比較対象として、オセアニア環礁の低い島の研究を並行して進めている。 考古学班(山口)は、名蔵の小谷戸でジオアーケオロジー的発掘調査を実施した。2×4mの発掘トレンチによって1200年前の陸域環境変化にせまることができた。当該期には、サキシマスオウやサガリバナが群生する汽水・淡水環境にあった湿地から沖積低地への変化が急速に進んだ。炭化木片が多数検出されたことから開墾の痕跡と考えられる。同一の層位からはムギの炭化粒子が出土しており、隣接する低位段丘上での農耕活動と土砂流出が想定される。また、名蔵湾浅海のハマサンゴが斃死した時期に相当し、人為的活動が陸域と海域の環境変遷の背景にあったと見てよい。形質人類学班(吉田)は、サンゴカルシウムの給餌試験を行ったマウスの頭蓋骨厚を計測することによって統計的に有意な結果を得た。また、ハワイのビショップ博物館にて、オセアニア先史人骨の骨厚計測を実施した。文化人類学班(深山、棚橋、朽木)は、サンゴ礁やサンゴの民俗的利用を明らかにするために聴取調査を実施した。また、石垣島を中心とする八重山諸島の人口動態(社会的ネットワーキング)とそのサンゴ礁環境に対する影響の歴史的解明に関する基礎史料の収集ならびに分析を実施した。『琉球新報』、『沖縄毎日新聞』、『うるま新報』の沖縄地方紙を総覧し、サンゴ礁-人間の関係に言及する記事のデータベース作成を進めている。アウトリーチ活動の一環として、平成23年8月に2回開催した一般講演会(名蔵公民館・石垣市図書館)では、山口、朽木、深山がこれまでの研究成果を発表した。また、公募研究の王在〓氏にも地域経済の連関的関係性からみたサンゴの相乗価値について講演いただいた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンゴ礁-人間の長期的な関係史を明らかにするために石垣島名蔵地区で実施してきたジオアーケオロジー的調査によって、1000-1200年前の人為的活動に起因する陸域の環境変遷が浅海域のハマサンゴやキクメイシの斃死の一因となった可能性を明らかにできた。このことは、将来的な保全の方向を議論する際に、単純に過去を理想化せず、自然と人間の長期的な絡み合いを踏まえることが必要であることを示すものである。また、民俗誌的情報の収集によってサンゴやサンゴ礁が単に魚場としてだけでなく、建材や資材としても頻繁に利用され、その際の態度は現在的な「保護」とは必ずしも一致しないことが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
景観史研究の目的は、自然と人間の絡み合いの歴史的産物として現在の景観を把握し、その延長線上に将来的な景観保全の方向を見定めることにある。学会や論文等で研究成果を公開するのはもちろんだが、後半の目的を達するためには、景観史研究の学術的成果を現地島民と共有しうる形に加工し、景観史のローカルなシナリオを協働によって組み立てていく必要がある。計画研究開始年度から毎年開催してきた一般講演会を発展させて、多様な立場の島民の参画を促すアクティブなアウトリーチ活動を立案・実施する計画である。そのプロセスのなかで、本計画研究を構成する考古学、形質人類学、歴史人類学、文化人類学の諸学間の連携、さらには他の計画研究との連携についても検討する。
|
Research Products
(13 results)