2021 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠発動の分子機構:深冬眠実行の分子基盤と飢餓性休眠との共通性の解明
Project Area | Mammalian hibernation biology ~ survival strategies via hypometabolism and hypothermia |
Project/Area Number |
20H05766
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 良文 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10447443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 正知 福山大学, 薬学部, 准教授 (30306203)
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Project Period (FY) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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Keywords | 哺乳類の冬眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる本年度は、昨年度に引き続きDEG1欠損シリアンハムスターおよびマウスの、冬眠および飢餓誘導性休眠への関与を個体レベルで検証した。昨年度に確認した、DEG1はマウスにおいて飢餓誘導性の休眠発動に必要であるという結果が追認された。一方、DEG1欠損シリアンハムスターにおいても十分数の個体において冬眠誘導実験を行った。その結果、野生型個体の多くが数ヶ月で冬眠を発動する短日・寒冷環境での長期飼育下でも、DEG1欠損シリアンハムスターの約半数は冬眠を発動しなかった。のこり半数の個体は冬眠したが、短日・寒冷環境下に置かれてから冬眠を発動するまでの日数が延長、すなわち冬眠の発動が遅延した。これらの実験と並行して、DEG1遺伝子の冬眠時の発現変動をmRNAおよびたんぱく質の両レベルで確認することに成功した。 さらなる展開として、DEG1欠損により冬眠・休眠発動が阻害される分子メカニズムを同定するべく、DEG1遺伝子破壊個体と野生型個体との間で発現変動する遺伝子の同定をRNA-seqを用いて試みた。また、生体脂質組成変化を通じて冬眠・休眠に影響を与える可能性も検討するため、リピドミクス分析の条件検討を開始した。これらオミクス解析結果の詳細な解析は最終年度に行い、DEG1が冬眠発動に影響を与える機序に迫る。これらの解析と並行して、DEG1欠損シリアンハムスターの行動解析実験も進めた。冬眠研究用に新規開発した、活動量・体温の長期計測が可能なデータロガーを用いて、野生型と異なる活動の検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も引き続き、樹立に成功したDEG1 KO個体の冬眠における表現型を解析した。その結果、DEG1 KO個体の約半数の個体では冬眠が発動せず、残りの個体でも前冬眠期が延長、すなわち冬眠発動が遅延することが明らかとなった。上記解析と並行して行ってきたDEG1遺伝子破壊マウスの飢餓性休眠における役割も明らかになりつつある。さらに、これらDEG1 KOハムスターおよびマウスの全身臓器での網羅的遺伝子発現解析を行い、DEG1による冬眠発動制御機構に迫る布石ができた。以上の進展から順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にむけて、DEG1欠損が冬眠休眠発動を阻害する機構の理解に向けた実験を行う。具体的にはRNA-seqデータの詳細な分析、DEG1欠損シリアンハムスターおよびマウスの行動是正による冬眠発動への影響の検証、AAVを用いた機能操作等、の実験により、冬眠発動へのDEG1遺伝子の関与を明らかにする。また成果を論文として取りまとめ国際誌への発表を目指す。
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Research Products
(14 results)