2020 Fiscal Year Annual Research Report
Age-related differences in the neural mechanisms underlying the socioemotional effect on human long-term memory
Project Area | Lifelong sciences: Reconceptualization of development and aging in the super aging society |
Project/Area Number |
20H05802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
月浦 崇 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30344112)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 記憶 / 加齢 / 環境 / 非侵襲的脳画像計測 / 神経心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒトの記憶の加齢による経年変化を脳の器質的変化だけで説明するのではなく、他者との社会的関係性などの外部環境や感情などの内部環境との相互作用の中で、どのように脳内メカニズムが可塑的に変化するのかの視点から解明することを目的とする。その目的を達成するために、本研究では健常若年成人と健常高齢者を対象とした脳機能画像研究と、神経疾患患者を対象とした神経心理学的研究の2つのアプローチを融合して研究を進める。 課題関連fMRIに関する研究では、自分とは異なる世代との交流の中で記銘された記憶の想起において、他者の処理に関連する後部上側頭溝領域と記憶に重要な海馬や前部側頭葉皮質の間の相互作用メカニズムが、加齢によって有意に低下していることが認められた。その一方で、自分と同年代の人物との交流の中で記銘された記憶の想起に関連するメカニズムについては、加齢による変化は認められなかった。この成果は、Frontiers in Behavioral Neuroscience誌に発表された。その他にも、他者との競争的関係によって記憶対象の刺激の価値が変化し、そのメカニズムとして眼窩前頭皮質と海馬の間の相互作用が重要であることが同定された。この成果は、Neuropsychologia誌に発表された。 安静時fMRIに関する研究では、他者への共感性の高さと主観的幸福感の低さが関連しており、その関連を媒介する神経メカニズムとして、デフォルトモードネットワークと前頭頭頂ネットワークの2つの相反する大規模脳機能ネットワークが関与することが示された。この成果は、Neuroimage誌に発表された。 神経疾患例に対する神経心理学的研究では、びまん性軸索損傷患者において未来思考の障害が認められ、その基盤として大規模脳機能ネットワークの損傷が関与する可能性が示された。その成果は、国内外の学会にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題関連fMRI研究については、これまでも複数の英文誌に関連する成果が発表されているのと同時に、現在も社会的文脈によって影響を受ける記憶のメカニズムとその加齢変化に関する研究が複数進められていることから、今後も着実な成果が得られると期待できる。安静時fMRI研究についても、これまでにその成果が国際誌に発表されており、今後も本学術変革領域研究の他の研究班との共同研究の中で、特に主観的幸福感に関わる神経メカニズムと加齢変化の研究を進める予定である。神経疾患例を対象とした研究についても、びまん性軸索損傷患者を対象とした複数の研究プロジェクトが進められており、それらの成果も国内外の学会において発表されていることから、今後は国際誌への掲載も期待できる。 以上のことから、現在までの進捗状況としては、「(2)おおむね順調に進展している」と判断することが妥当であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題関連fMRI研究については、対象の社会的価値がその記憶に与える脳内メカニズムとその加齢変化に関する研究や、他者との社会的関係性が記憶に与える影響とその加齢変化に関する脳内メカニズムの研究など、当初に立てた計画に即して研究を推進していく予定である。さらに、本学術変革領域内の他の研究班との共同研究の枠組みの中で、バーチャルリアリティの技術を用いた研究にも着手するなど、当初の予定をより発展させる形で研究を進めることも計画している。 安静時fMRI研究についても、本学術変革領域内の他の研究班との共同研究の枠組みの中で、ソーシャルサポートやライフスタイルの要因も考慮した研究を推進し、当初の予定をより発展させた形で研究を推進したいと考えている。 神経疾患例を対象とした研究については、びまん性軸索損傷患者を対象としたこれまでに実施してきた研究を国際誌に発表するのと同時に、当該症例を対象とした記憶の忘却に関する研究を進め、大規模脳機能ネットワークの損傷が記憶の忘却に対してどのような影響を与えるのかを明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(11 results)