2021 Fiscal Year Annual Research Report
高密度共役キラル分子集積体における高効率電流-スピン流変換
Project Area | Condensed Conjugation Molecular Physics and Chemistry: Revisiting "Electronic Conjugation" Leading to Innovative Physical Properties of Molecular Materials |
Project/Area Number |
20H05870
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須田 理行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80585159)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 久暁 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50362273)
|
Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / スピン偏極電流 / キラリティ / CISS効果 / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「空間反転対称性の破れによるスピン選択性(CISS効果)」という新たな原理に基づき、有機分子による電流/スピン流変換システムを創出することを目的としている。本年度は、今後A01, A02班によって合成・集積化される高密度共役キラル分子を用いた電流/スピン流変換システムの創出に備え、基盤となるプラットフォームの構築に取り組んだ。 従来、キラルな有機単分子膜に対して行われていたCISS効果の研究に対し、本研究では、金属ナノ粒子集積体および無機層状二次元物質へのキラル分子の導入という新たな着想の元、実際にそれぞれ80%、75%に及ぶ高いスピン偏極率と金属伝導性を室温において併せ持つ、新たなスピン偏極材料の創成に成功した。更に、本材料によって生成される高スピン偏極電流を電気化学分野へと応用するスピン依存電気化学の実証に取り組んだ。実際に、スピン偏極電流中においてスピンが平行に揃っていることを利用し、スピン多重度選択的電気化学反応の実現に取り組んだ。具体的には、スピン三重項酸素とスピン一重項過酸化水素の生成が競合する水電解における酸素発生反応において、スピン三重項酸素を優先的に生成し、水電解効率を向上させることに成功した。本システムでは、キラル分子の選択に柔軟性を残しており、今後合成される高密度共役キラル分子を用いることによって更なるスピン偏極率の増大が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はcovid-19の流行による物品調達や共同研究の遅延などによって、一部研究計画の遅れも見られたが、一方で、新たな電流/スピン流変換プラットフォームを開発し、既存のキラル分子を利用しても高効率な電流/スピン流変換効率を実現可能であることを見出した。更に、高効率なスピン偏極電流を電気化学に応用するという新たな研究展開の可能性も見出した。したがって、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は領域内において生み出された高密度共役キラル分子集積体を用いて,革新的電流/スピン流変換システムを創出することにあるが、次年度は既存の高密度キラル分子集積体を用いて電流-スピン流変換効率を計測する。螺旋分子密度、螺旋ピッチ、螺旋半径の高密度化による電流-スピン流変換効率の向上という仮説を実証しつつ、測定結果をA01・A02班へとフィートバックする。具体的には、オルトフェニレン分子を用いた計測を進める。オルトフェニレン分子は、フェニレンユニット間距離が3.232-3.285 Åとグラファイトの層間距離(3.35Å)より短く、高密度な螺旋ピッチ・半径を有している。また、本分子の螺旋ピッチや分子長(螺旋数)、エナンチオ過剰率といったパラメータの制御が可能であることに着目し、螺旋構造の高密度化による高効率電流/スピン流変換という仮説の実証を行う。
|
Research Products
(14 results)