2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
20H05949
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 慎太郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70581601)
|
Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
|
Keywords | 構造最適化 / トポロジー最適化 / 形態形成 / 適応進化 / 魚類椎骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の形態は、長い年月をかけた適応進化の結果として得られた構造である。一方で、数学理論に基づいて、工業製品の最適な構造を計算機で導出する設計方法論として、構造最適化が提案、研究されている。生物の適応進化を、環境への適応を目的としたある種の最適化と捉えれば、工学理論である構造最適化を用いて、生物の形態形成の謎に迫ることが可能であろう。本研究の目的は、構造最適化により様々な生物の形態形成の仕組みを解明し、この仮説について検証することにある。
2021年度は、具体的研究テーマとして、①構造最適化による魚類椎骨の形態の再現、②構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現、③構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現に取り組んだ。研究テーマ①では、以前より,トポロジー最適化と呼ばれる構造最適化の一種を用いて魚類椎骨の形態形成モデルを構築し,そこに様々な荷重条件を与えることで、多様な椎骨の形態が再現できることを確認し、実際の魚類椎骨の標本との比較により、実際の魚の椎骨部にかかる荷重条件の推定を行う取り組みを行っていた。2021年度に上記の研究成果をまとめた論文を、国際学術雑誌に掲載した。研究テーマ②では、以前より構築していた、オタマボヤの体表面に沿って垂直2軸に作用する引っ張り力を仮定し、最小の体積でその力に抗するようにセルロースを配置することで、オタマボヤハウスの流入口フィルターの形態を再現する形態形成モデルに対して、荷重条件の改良を行い、従来モデルよりも形態の再現精度の高いモデルを構築した。研究テーマ③では、以前より構築していた、エネルギー輸送系における電気化学反応の構造最適化モデルを参考に、カワカイメンの水管構造を再現する形態形成モデルに対して、網羅的な形態形成モデルのパラメータスタディを行い、カワカイメンの水管構造に影響を与えるモデルパラメータの絞り込みを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、工学分野で研究・開発されている構造最適化理論を用いて、生物の形態形成の仕組みの解明を試みるものである。以前より、具体的な研究テーマとして、「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」「構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現」「構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現」を設定し、それぞれについて、構造最適化の観点から形態形成を説明しうるモデルの構築に取り組んできた。昨年度は、それらの形態形成モデルの改良を行い、形態再現性の向上、形態形成に及ぼす影響度の高いモデルパラメータの絞り込みなど、大きな進展があった。特に、「構造最適化による魚類椎骨の形態の再現」については、研究成果をまとめた論文を国際学術雑誌「PLoS Computational Biology」に掲載した。以上より、本研究は、概ね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、研究テーマ:①構造最適化による魚類椎骨の形態の再現、②構造最適化によるオタマボヤハウスの形態の再現、③構造最適化によるカワカイメンの水管構造の再現、に取り組む。
研究テーマ①では、昨年度より、魚類椎骨の形態・形状のさらなる再現精度向上を目指し、骨の力学的挙動を表現するために、等方弾性体モデルではなく、骨組織の繊維構造に由来する材料異方性を考慮した弾性モデルを導入し、これによる魚類椎骨の形態再現に取り組んできたが、今年度も引き続き、この取り組みを発展させていく。 研究テーマ②では、オタマボヤハウスの流入口フィルターの形態を再現する形態形成モデルの改良を行い、従来モデルよりも形態の再現精度の高いモデルの提案を行った。今年度は、実験系班員と協力し、その改良モデルの妥当性の実験検証に取り組む予定である。具体的には、オタマボヤの体表面に作用する荷重を直接計測するのではなく、体表面に生じる力の源となる因子を操作することで、オタマボヤハウスの形態形成がどのように変化するのかを観察し、検証を行う。そして、検証データをフィードバックし、形態形成モデルのさらなる精度向上に取り組む。 研究テーマ③では、これまでに、エネルギー輸送系における電気化学反応効率の最大化を目的とした構造最適化モデルを参考にして、カワカイメンの水管構造を再現する形態形成モデルを構築した。さらに、形態形成モデルのパラメータスタディを行い、カワカイメンの水管構造に影響を与えるモデルパラメータの絞り込みを行った。今年度は、引き続き、形態形成モデルの改良および、カワカイメンの水管形成に関する重要なパラメータの特定に関する研究を実施するとともに、実験系班員と協力して、得られた知見の実験検証に取り組む予定である。
|
Research Products
(2 results)