2021 Fiscal Year Annual Research Report
In-cell chemistry of supersulfur species in biology
Project Area | Life Science Innovation Driven by Supersulfide Biology |
Project/Area Number |
21H05259
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
中川 秀彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (80281674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
異島 優 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 准教授 (00457590)
梅澤 啓太郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30505764)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | 超硫黄分子 / 翻訳後修飾 / ポリスルフィド / 蛍光プローブ / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞系(細胞内及び細胞表面・細胞間質)における超硫黄分子・超硫黄修飾の化学的性質、すなわち存在様態と反応性を明らかにし、超硫黄in-cellケミストリーを確立することを目指す。 今年度は、これまでの独自の知見に基づいてシステインパースルフィドに反応選択性が高いタグ化試薬を設計合成し性能を比較した。その結果、システインおよびグルタチオンとそれぞれのパースルフィド体との反応性が100倍程度異なるプローブ化合物を見出した。これをもとに細胞溶解液中のタンパク質ラベル化を行ったが、より高い反応選択性が必要であることが判明した。 また本年度は、細胞外成分、主に血清タンパクに着目し、超硫黄修飾タンパク質の存在やそれらの反応性を明らかにすべく、全酸化型超硫黄分子を定量可能なEMSP法や全還元型超硫黄分子のDTT-MB法を用いた解析を行った。酸化ストレス刺激として紫外線を用い、血清アルブミンの超硫黄分子の反応性を評価したところ、紫外線により酸化型超硫黄分子が減少し、還元型超硫黄分子が増大した。タグ化試薬を用いたMS解析やタンパク質パースルフィド化の特異的検出蛍光プローブを用いた解析によっても、還元型超硫黄分子の増大を確認した。本結果は紫外線による超硫黄分子の酸化型から還元型への変動を捉えた初の報告である。 さらに本年度は、アルキル化剤をモチーフとしたタンパク質ポリスルフィド修飾用タグ分子の構造展開を行った。具体的には、脱離能や立体障害等が異なる様々なタグ化試薬群を複数合成し、アルブミン等の精製タンパク質標品を用いてポリスルフィドへの選択性を評価し、タグ化試薬ライブラリーと反応選択性に関する構造相関を精査した。その結果、脱離能や立体障害を制御することで、ポリスルフィド基への相対的反応性を高くすることが可能となり、超硫黄プロテオミクス実現に向けて有力なタグ化試薬の分子構造の候補を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
システインおよびグルタチオンについて、パースルフィド化したモデル化合物に対して100倍程度高い選択性を有するプローブ化合物の開発に成功し、基本的分子設計の指針を得ることができた。 また、酸化ストレス刺激として紫外線を用いて血清アルブミンの超硫黄分子の反応性を評価することで、酸化ストレス下で酸化型超硫黄分子が減少し還元型超硫黄分子が増大することを見出した。さらに、タグ化試薬を用いたMS解析やタンパク質パースルフィド化の特異的検出蛍光プローブを用いた解析によって還元型超硫黄分子の増大を見出した。
これらの開発・発見により当初の目的に向けて着実に知見が得られているから。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発したパースルフィド反応性プローブの知見に基づいて、パースルフィド反応点の立体障害および脱離能を変化させたさらなる誘導体を設計合成し、反応性の差を検討する。これによりタンパク質中のシステイン残基との選択性を向上させることが可能と考えられる。また、タグ化試薬の構造展開により、超硫黄修飾タンパク質を蛍光タグ化する超硫黄タグ化プローブの開発をめざし、蛍光ラベル化可能な反応点を有するラベル化蛍光プローブを複数合成し、タンパク質蛍光ラベル化 の効率を検証する。 また、定量的硫黄修飾解析に関して、昨年度行った血中サンプルに加え、本年度はその他の生体液や毛髪における全酸化型超硫黄分子を定量可能なEMSP法や全還元型超硫黄分子のDTT-MB法を基軸に、タグ化試薬を用いたMS解析やタンパク質パースルフィド化の特異的検出蛍光プローブ等の確立した方法での裏付けを取りながら、超硫黄分子の存在量や存在様式、またその反応性を網羅的に明らかにしていく予定である。加えて、「酸化ストレス関連疾患の病態発症・進展」と「超硫黄修飾タンパク質」の関連性も明らかにしていく。 さらに、オミクス解析に関して、今年度開発したタグ化試薬群をもとに、タンパク質解析を指向したタグ化試薬の機能化(アルキニル基の導入によるクリックケミストリーへの展開等)および、細胞等の生体試料に対するタグ化試薬の適応性および細胞内タンパク質の超硫黄構造への反応性の違いを精査する。これらの研究を経て、階層的超硫黄プロテオミクスの構築に向けた新たな指針を得ることを目指す。
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