2021 Fiscal Year Annual Research Report
細胞競合の普遍的制御分子の同定とその動作機序の解明
Project Area | Understanding multicellular autonomy by competitive cell-cell communications |
Project/Area Number |
21H05285
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 恭之 京都大学, 医学研究科, 教授 (50580974)
|
Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
Keywords | 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞集団内に生まれた異常細胞や変異細胞は、細胞間相互作用を介した細胞排除現象である「細胞競合」によって集団から排除される。本計画研究では、がん原性変異に加えて代謝異常、細胞老化など様々な機能低下・異常細胞と正常細胞との細胞競合へと研究対象を拡大し、様々な細胞競合の勝者・敗者の境界面で普遍的かつ細胞競合特異的に機能する分子群をsynNotchシステムおよび空間オミクス解析により網羅的に同定する。これにより、細胞競合の普遍的制御分子群を同定し、その動作機序を解明することで、細胞競合の普遍的メカニズムを理解を深めるとともに、細胞競合による多細胞生命システムの自律性の生成メカニズムの解明に迫る。 申請者は細胞競合によって排除される様々なタイプの異常細胞モデルを構築している。2021年度には、MDCK細胞の変異細胞株として、リボソームタンパク質 RPL24 のshRNA発現細胞を樹立し、RPL24のノックダウンが細胞競合を引き起こすことを示した。さらに、これらの新たに構築した細胞競合モデル、およびこれまで解析に用いてきたがん原性Ras変異細胞やScribble変異細胞を対象として、synNotchシステムと空間オミクスを利用して細胞競合制御因子を網羅的に同定するためのスクリーニングプラットフォームを構築することに成功した。 一方、原田班との共同研究により、任意に選択した細胞のRNA情報のみを光照射によって取得できるPIC法を応用した空間オミクス解析を行う。RNA-seq解析により、細胞競合の勝者―敗者の境界面で特異的に生じる遺伝子発現変化を網羅的に探索し、Gene Ontology解析により発現が変化した遺伝子群の特徴を評価する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究によって、synNotchスクリーニングシステムの構築のため、CD19とBFPを共発現するRas変異細胞株とanti-CD19 synNotchを発現する正常細胞株を樹立した。また、これらの細胞を共培養すると、異常細胞に直接接した正常細胞にのみmCherryの発現が誘導されることも確認することができた。細胞競合条件下でmCherryを発現する正常細胞をFACSで分取し、RNA-seq解析のためのサンプルを作成し、現在、解析結果を待っているところである。 また、PIC法についても2021年度の研究によって、実際に光照射を行う培養条件や用いる蛍光染色など、各種実験条件の最適化を進めることができた。 このように、現在まで、予定通り順調に研究は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、synNotchスクリーニングで同定される分子の機能的解析を進めるとともに、さらに他の変異・異常細胞を用いた細胞系を確立し、スクリーニングを包括的に展開する。また、PIC法については、RNA-seq解析により、細胞競合制御因子の同定を進めていく。 スクリーニングで同定した分子群ががん原性変異細胞の排除をも制御するかを検証し、制御する場合にはどのプロセスに関与するかを詳細に解析することで、多様な細胞競合現象を制御する普遍的な分子メカニズムを解明する。本研究で得られた知見を他の研究班の細胞競合系で検証・解析することで、生物種を超えた細胞競合の普遍的メカニズムを明らかにする。
|
Research Products
(8 results)