2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
22101004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 健一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30150056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 廣吉 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (10150799)
若野 友一郎 明治大学, 大学院・先端数理科学研究科, 准教授 (10376551)
木村 亮介 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 特命准教授 (00453712)
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Keywords | 学習スケジュール / 新人特異的な学習戦略 / 反応拡散モデル / イノヴェーション能力の進化 / 分子集団遺伝学 / デモグラフィの再構築 / 国際ワークショップ |
Research Abstract |
(1)代表者・青木と分担者・若野は、海外共同研究者のLehmannと共同で、学習スケジュールの進化モデルを研究し、論文1報が受理された。とりわけ、社会学習(模倣など、他者から学ぶこと)によって習得した文化要素を個体学習(試行錯誤など、自力で学ぶこと)によって改善するという複合学習戦略(SE戦略)が進化するための条件を検討した。その結果、世代時間よりも短い時間スケールでの環境変化が、その一つの条件であることが示された。例えば交易や婚姻に伴う、人生半ばの遠距離(環境が異なる地域への)移住がその候補である。SE戦略の重要性は、新人の文化の特徴ともいえる蓄積性(累積的改変)を支えていると考えられるところにある。(2)分担者・川崎は、環境状態に依存する移住様式が生物の分布拡大に及ぼす効果について、反応拡散方モデルを用いた理論的研究を行い、論文1報が受理された。さらに、この研究から得られた知見をもとに、空間的に異質な環境への分布拡大中に起きる学習戦略の進化についても、理論的研究を進めた。後者の研究は、22年度に受理された青木および若野との共著論文のモデルを大幅に拡張したものであり、24年度に投稿予定である。(3)上記理論的研究から得られる予測を検証するためには、人口動態が重要な役割を演じる。このため、分担者・木村は、新人の集団分岐や移住様式をゲノム多様性データから統計的に推定する方法を開発している。また、さらに進んで、実データから具体的なデモグラフィを再構築し、関連するパラメタを推定する方法を検討した。(4)23年度交付申請書で述べた国際ワークショップを実施した。国外から著名研究者5名(その内、海外共同研究者2名)を招聘し、国内から主要研究者や学生を含む20名が参加した。成果の中間発表と意見交換を通して、新たなネットワーク形成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青木、若野、および川崎による進化モデルの研究は、旧人と新人が生得的に異なる学習戦略を持つに至った経緯について、その理論的根拠を明らかにしつつあり、成果は国際誌に次々と発表されている。また、フルタイムで雇用している研究協力者2名も、代表者・分担者との共同研究および独創的な自主研究を通して、研究課題に大きく貢献している。一方、木村による新人のデモグラフィの再構築、および新人特異的な学習関連遺伝子の同定は、未だに具体的な成果を出していない。
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Strategy for Future Research Activity |
青木、川崎、および若野による進化モデルの研究においては、比較的抽象的で単純化されたモデルを多用してきた。単純化されたモデルは、研究の方向性を定めるのに適しているが、その一方で、予測の解像度が低いという欠点もある。この欠点を補うため、研究計画調書にも述べた通り24年度以降は、より具体的な仮定に基づくシミュレーションを重点的に用いて、さらに詳細な予測を求めて行く。一方、木村による新人のデモグラフィの再構築は、種々の統計的アーティファクトの処理に手間取っているために、もう少し時間が掛かりそうである。24年度には研究協力者を雇用する予定であり、研究の加速が期待される。また、新人特異的な学習関連遺伝子を同定するためには、公募研究・嶋田誠と共同で現代人ゲノム中の旧人由来ハプロタイプを解析することを検討している。
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Research Products
(26 results)