2013 Fiscal Year Annual Research Report
縁辺海の海洋構造に励起される大気海洋相互作用と海洋生態系への影響
Project Area | Multi-scale air-sea interaction under the East-Asian monsoon: A "hot spot" in the climate system |
Project/Area Number |
22106002
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
磯辺 篤彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00281189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (10322273)
石坂 丞二 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (40304969)
中村 啓彦 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (50284914)
木田 新一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (50543229)
広瀬 直毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70335983)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 縁辺海の大気海洋相互作用 / 海洋生態系 / 海洋同化プロダクト |
Research Abstract |
縁辺海規模の大気ー海洋相互作用に関する研究を進めた。黄海・東シナ海西部の大陸沿岸域において、冬季の海面冷却によって低下した海面水温が、気温や海面気圧分布を変化させ、これが海上風分布を変えることで海面冷却を緩和させるといった、負のフィードバック機構を発見した(Iwasaki&Isobe, J.Climで公表)。東シナ海の黒潮上で実施したXBT/ゾンデ同時観測の結果を取りまとめ、2011年の観測では、黒潮上で、局所的・一時的な海上風速の低下が引き起こされる事実を発見した。これは衛星観測に基づく既往研究が明らかにしてきた、暖水上での海上風強化現象と相反する結果であった(Kasamo et al., JGR-Atomos.で公表)。南シナ海の北部海域において、海面水温と海上風速の高い相関関係を、衛星風観測と統合海面水温データの解析、および地域気象モデリングの解析によって明らかにした(Shi et al., DSRで公表)。東シナ海において、黒潮前線上での風応力の局所的な変化が黒潮の小蛇行を引き起こし、これが九州東方へと伝播する様子を見いだした。さらに、大気海洋過程に対する生態系のアクティブな関与を研究した。すなわち、日本海における春季の植物プランクトンブルームが海面水温を上昇させる程度を、海色衛星データを用いた混合層モデルで計算した。またこの水温上昇量を地域気象モデルの海面水温条件に加えて大気応答を見た。結果、植物プランクトンによる海面水温の上昇が、東アジアで風速が弱くなる時期には,日本南東岸で低気圧の発達を促進させることもあるとの結論に至った(Isobe et al., 投稿中)。さらに、縁辺海の大気海洋相互作用に有用な海洋同化プロダクトを構築し、アカデミックフリーでの公開を始めた(Hirose et al., Sea&Skyで公開)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画にあった縁辺海における大気海洋相互作用の発見は順調に進み、ハイランクの学術雑誌(J.Clim, JGR, DSR等)に掲載されている。海洋生態系の相互作用に及ぼす影響研究も成果を上げつつある。更に、当初予定にはなかった海洋同化プロダクトの公開も達成できた。このデータセットの海面水温を境界条件に用いることで、地域気象モデルや沿岸気象モデルの高度化が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
生態系を含めた相互作用系について研究をすすめ、計画調書に記載された通りの大気-海洋-生態系相互作用について成果を取りまとめる。黒潮の小蛇行などの微小な海洋構造から、大気応答への発展について事例研究を進めていく。縁辺海から更に規模を下げて、沿岸海域(たとえば瀬戸内海)における海洋構造が大気過程に与える影響について研究成果を取りまとめる。具体的には、大潮・小潮変動に伴う鉛直混合の変化、そしてこれによる海面水温の変化と、海上風の変化について研究を進めつつある。以上、沿岸から縁辺海の空間規模においても双方向の大気海洋過程が成立すること、そして浅海域においては、加えて生態系が一定の役割を果たす可能性を検証して、当計画班の成果とする。
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Research Products
(38 results)