2011 Fiscal Year Annual Research Report
黒潮続流循環系の形成・変動メカニズムと大気・海洋生態系への影響
Project Area | Multi-scale air-sea interaction under the East-Asian monsoon: A "hot spot" in the climate system |
Project/Area Number |
22106006
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野中 正見 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (90358771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保川 厚 北海道大学, 地球環境科学研究科, 教授 (00178039)
佐々木 英治 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (50359220)
田口 文明 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (80435841)
細田 滋毅 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー代理 (60399582)
中野 英之 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 主任研究官 (60370334)
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Keywords | 中緯度大気海洋相互作用 / 黒潮・黒潮続流 / 海洋前線帯 / 海洋大循環モデル / Argoフロート |
Research Abstract |
・黒潮続流の平均緯度の決定要因を探るために、準地衡流2層モデルの枠組みの中で、非線形性、粘性、境界条件などを変えた実験を多数行い、黒潮続流緯度はほぼ風応力の南北分布のみによることが明らかになってきた。また、渦解像海洋モデルの経年変動積分において、渦活動に起因する内部境界面変動に伴う鉛直下向きの鉛直運動量輸送が、黒潮続流上の亜表層(300m付近)において卓越し、黒潮続流の長期平均場へ影響していることが明らかとなった。 ・渦解像海洋大循環モデルを異なる初期値から同一の経年変動外力で駆動した複数の積分結果から、黒潮続流域においては外力に起因する経年変動と同程度に大きい顕著な初期値依存性が示された。 ・1/30度の水平解像度を持つ北太平洋域の超高解像度海洋大循環モデルの2年間積分結果から、運動エネルギーが弱い海域ではスケール間相互作用を把握するために小規模の海洋現象を含めた解析が必要であることを示唆し、現在より高解像度の海面高度衛星観測の必要性を提言した。 ・海洋モデル・データ同化システムを用いた長期変動再現実験や予測実験により黒潮大蛇行の安定性が黒潮流量に強く依存すること、および流量とともに、黒潮続流及び台湾沖の渦活動の状態を考慮することにより過去の大蛇行の履歴は概ね説明されることがわかった。また、続流域からの渦の切離が、海洋全層にわたる栄養輸送に大きく寄与していることがわかった。 ・観測データと大気海洋結合モデルを用いて、北太平洋亜寒帯前線帯の十年規模変動が、寒候期のストームトラック活動度と大規模大気循環に顕著な影響を及ぼすことを示した。 ・Argoフロートや衛星観測データを用いて、海盆規模の海洋混合層深度および熱交換過程の季節変動に関する解析を行い、春から夏の大気からの加熱効果に対し、表層混合層だけでなくその下層も熱交換過程に重要な役割を果たすことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4つに大別した研究テーマについて、概ね平成23年度の計画に従って研究を実施し、黒潮続流の平均的循環や自励的変動の特性に関する理解が深められた。また亜寒帯前線帯の変動が大気へ及ぼす影響を示した論文を発表した。これらに加え、特に、日本付近の海運や水産業に大きな影響を及ぼす、日本南岸の黒潮大蛇行の過去の履歴についての理解が大きく前進した。この部分に関しては当初の計画以上の進展が見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られてきた成果については論文としての取りまとめを進めることで理解を深化させるとともに、研究コミュニティへの公表を進める。各研究テーマに関しては、当初計画に基づいて着実に推進するとともに、海洋から大気場への影響に関しては、別途観測航海の機会が得られたため、これを活用し、船舶上での直接大気観測も含めた研究を行う。平成25年度初頭に観測を行うために今年度はその為の準備を進める。また、今年度6~7月に行われる本新学術領域研究全体を挙げての集中観測にも参加する。 また、当初計画から遅れ気味の部分もある生態系モデル組み込んだ海洋大循環モデルによる実験に関して、実験設定等及び今年度以降の計画についての検討を早期に行う。
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