2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
22120007
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
西村 幹夫 基礎生物学研究所, 高次細胞機構研究部門, 教授 (80093061)
|
Keywords | ぺルオキシソーム / オイルボディ / オルガネラ相互作用 / 環境応答 / 植物細胞 |
Research Abstract |
環境感覚としてのオルガネラ相互作用機構を分子レベルで明らかにするために、ペルオキシソームと葉緑体との相互作用に注目して大規模な変異体の選抜を行い、70ほどの接着異常変異体を得た。各々の変異体の形質を詳細に観察すると、ペルオキシソームが凝集して葉緑体から解離する、細胞質中に分散する、ペルオキシソームの光依存的形態変化が損なわれ、葉緑体との接着力が低下している、葉緑体の形態が異常となりペルオキシソームが解離する等の表現形質を示した。これら変異体の原因遺伝子は、オルガネラ相互作用を制御する重要な因子であることが予想された。そこで、次世代シークエンサーを用いて、全ゲノム解析による原因遺伝子の同定を試みた。上記形質による分類を行い、順次重要な因子を欠損していると予測されたものを選抜し、本年度は10個体に関して解析を進めた。その結果、各々の変異体ゲノム内には、複数のタンパク質コード領域に変異箇所が同定されたため、候補となる変異体をリソースセンターより取り寄せ、解析を進めている。 先に選抜しているオルガネラ相互作用欠損変異体の緑葉組織を用いて、電子顕微鏡解析を行った結果、凝集体を形成する一部のペルオキシソーム内部には電子密度の高い領域をもつ異常なペルオキシソームが存在していた。また、免疫電顕によりこの電子密度の高い領域にはカタラーゼ蓄積が明らかになった。また、強光下ではこれら変異体の傷害が進行し、活性酸素種を蓄積することから、オルガネラ相互作用欠損と植物の光阻害との相関性が示唆された。 ペルオキシソームの機能維持において、マトリックスタンパク質の輸送システムを理解することは植物細胞の環境感覚を理解するうえで重要である。本年度はペルオキシソームの輸送に関する植物特異的新規因子apem9の機能解析を行い、Plant Cell誌で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光環境下においてペルオキシソームは形態を大きく変化させ葉緑体、ミトコンドリアとの物理的相互作用を行う。この過程において代謝産物や様々な物質のやり取り、活性酸素の消去などを行い植物の環境適応に寄与していると考えられる。この現象をより深く遺伝子やタンパク質の機能レベルで理解するために、光に依存した植物細胞内の生理現象を利用し独自に変異体の選抜方法を開発した。実際にこれまで70ほどのペルオキシソームと葉緑体間相互作用変異体を選抜したことは、今後の研究の進展が期待され評価に値すると思われる。次に、計画通りに変異体を表現形の違いにより分類し、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を行い、目的遺伝子の同定を進めた。予想以上にEMS処理による点変異が挿入され、原因遺伝子の特定に困難な点があったが、遺伝子マッピングや比較解析を取り入れることにより、順調に解析は進んでいる。さらに先に選抜したペルオキシソーム形態異常変異体の解析を進めペルオキシソームの輸送に関する植物の新規因子apem9に関しては専門誌に報告し成果を具体化している。 また、解析技術開発グループとの共同研究を積極的に進めている点も評価に値すると思われる。特にA03ケ)レーザー顕微手術と連携して、明暗条件下でのペルオキシソームと葉緑体との接着力測定を行う系の構築を進めた。現在までに、共焦点顕微鏡下において、葉緑体近傍にあるペルオキシソームから5mmの距離に、異なる強度のフェムト秒レーザーを打ち込み、解離度から具体的な接着力を測定する段階まで到達しており、新領域研究班員間の共同研究成果として特筆したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
環境に応じた植物細胞内のオルガネラ相互作用をより深く理解するためには、遺伝子やタンパク質の機能レベルでの理解が不可欠である。そのために、選抜したオルガネラ相互作用変異体の原因遺伝子同定を網羅的に行う研究を中心に推進する。引き続き、残りの60ラインのペルオキシソームー葉緑体相互作用変異体から順次次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を行い、目的遺伝子の同定を進める。この時、形質の特徴を詳細に解析し、新たな因子の同定を優先させて解析する。また、遺伝子マッピングや比較解析を同時に取り入れることにより、EMS処理による点変異が予想以上に多く挿入された変異体の解析を効率的に行う。さらに、先に選抜した相互作用変異体や、ペルオキシソーム形態異常変異体の解析を進める。明らかになったタンパク質の詳細な局在解析や免疫沈降法による相互作用因子の同定を試みる。また、環境に応答した変異体細胞内での代謝産物量の変動、遺伝子発現量の変化、タンパク質の局在や活性の変化等、オルガネラ相互作用の役割を明らかにする解析を行う。 次に、解析技術開発グループとの共同研究を積極的に進め、遺伝子発現解析や代謝産物の変動等に注目した研究を推進する。特にA03ケ)レーザー顕微手術との連携においては、推進しているオルガネラ間接着力測定を光合成阻害剤、細胞骨格阻害剤を添加した植物細胞内の解析に適用して、その影響を調べる。最終的には選抜した変異体におけるペルオキシソームと葉緑体間の接着力測定を試みる。
|
Research Products
(6 results)