2010 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムアダプテーションにおけるストレス誘導性エピジェネティック変化の役割
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
22125005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石井 俊輔 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 主任研究員 (00124785)
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Keywords | ストレス / ゲノム / 適応 / ヒストン修飾 / ATF-2 / ATF-7 / 遺伝 / エピジェネテクス |
Research Abstract |
ATF-2ファミリーメンバーの一つであるATF-7のノックアウトマウスが、不安様行動を示す事を見出した。この行動異常は、セロトニン系と関連することが示唆されたので、多くのセロトニンが局在している脳内の脳幹部分からRNAを調製し、発現アレイ解析を行なった。その結果、ATF-7変異体では、セロトニン受容体5bの発現が著しく上昇していた。ATF-7は、セロトニン受容体5bの転写制御領域に結合し、ヒストンH3K9トリメチル化酵素ESETをリクルートし、ヒストンH3K9のメチル化を亢進して、転写を抑制することが示された。ATF-7変異体の行動異常は、野生型マウスを単独飼育し、社会的分離ストレスを与えた際に観察される行動異常の一部と似通っていた。そこで、社会的分離ストレスとセロトニン受容体5bの発現との関連を調べると、社会的分離ストレスによってこの遺伝子の発現が顕著に誘導されることが示された。さらに、社会的分離ストレスによって、ATF-7がリン酸化され、セロトニン受容体5bの転写制御領域から遊離することも示された。社会的分離ストレスによって末梢組織において、TNF-□のような炎症性サイトカインのレベルが上昇することが知られているので、このようなサイトカインが脳関門を通過して、セロトニンニューロンに到達し、ストレス応答性キナーゼp38を介して、ATF-7のリン酸化を誘導すると考えられる。このように、社会的分離ストレスのような長期的ストレスが、どのように脳内の遺伝子発現を制御し、行動異常を誘導するかについての、メカニズムの一端が明らかにされた。
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Research Products
(9 results)