2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular mechanisms for establishment of sex differences. |
Project/Area Number |
22132002
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
諸橋 憲一郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 主幹教授 (30183114)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム / 発現制御 / 発生・分化 |
Research Abstract |
生殖腺は遺伝的制御によって性を獲得し、次いで性ホルモンの産生を通じ、生殖腺とその他の組織の性差を構築する。本研究では、この過程での遺伝子発現の性差がヒストン修飾を介した性特異的なクロマチン構造によると推測し、性差構築の分子基盤を明らかにすることを目的とした。 ① 生殖腺の性差構築に重要なAd4BP/ SF-1の標的領域とクロマチン構造を、胎仔ライディッヒ細胞と成獣ライディッヒ細胞、ならびにセルトリ細胞で検討した。このうち成獣ライディッヒ細胞ならびにセルトリ細胞で成果が得られた。成獣ライディッヒ細胞においてステロイドホルモン合成の前駆物質であるコレステロール合成経路を構成する遺伝子のほとんどをAd4BP/SF-1が制御することが示された。また、同様にステロイドホルモンを産生する副腎皮質においてAd4BP/SF-1が解糖系遺伝子群を制御することを明らかにしたが(Nature Communications 2014)、成獣ライディッヒ細胞においてもAd4BP/SF-1が解糖系遺伝子座に結合していた。セルトリ細胞では、男性ホルモン受容体遺伝子破壊マウスでは精子形成に関わる遺伝子座のヒストン修飾に変化が認められ、このことが本遺伝子破壊マウスにおける精子形成能の消失につながると考えられた。 ② 胎仔ライディッヒ細胞は胎仔のオス化に必須の細胞であるが、その機能や分化メカニズムは不明であった。我々は胎仔ライディッヒ細胞をEGFP標識したマウスを作成するとともに、胎仔ライディッヒ細胞を時期特異的に消失させることに成功した。これらのマウスを用いた結果、胎仔ライディッヒ細胞は生後にも存在すること、胎仔精巣のテストステロン合成は胎仔ライディッヒ細胞に加え、セルトリ細胞が不可欠であること(Mol Endocrinol 2013)、生後に存在する胎仔ライディッヒ細胞は生後の精巣形成に必須であること(投稿準備中)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生殖腺の性差形成に重要な役割を担うことが予想されていたAd4BP/SF-1は、ステロイドホルモン合成に関与する一群の遺伝子の制御に関わることが知られてきたが、今回のわれわれの研究からステロイドホルモン合成のみならず、解糖系やコレステロール合成に関わる遺伝子群の制御も行っていることが明らかになってきた。この発見はエネルギー代謝の性差が細胞や組織の性差と深く関わることを示唆する結果であり、性差構築メカニズムを解明する上で新たな視点を与えるものであった。また、胎仔ライディッヒ細胞に関する研究からは、これまで教科書や種々の総説に記載されてきたことを覆す結果が得られており、胎仔期の性差構築を考える上で非常に貴重な成果を提出することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては以下の3点について研究を行う。 ① Ad4BP/SF-1によるコレステロール産生経路に位置する遺伝子の制御; Ad4BP/SF-1のノックダウンによってコレステロール産生系遺伝子の発現が低下することからコレステロール産生が低下することが期待される。また、同時に本因子が解糖系遺伝子の制御に関わることを考慮すれば、コレステロール合成に必要なATPとNADPH量の低下も期待される。これらの物質の定量を行う。 ② Ad4BP/SF-1によるエネルギー産生と性差;種々の糖濃度下におけるAd4BP/SF-1の標的遺伝子の変化を明らかにする。糖濃度によってAd4BP/SF-1がその標的遺伝子となるエネルギー代謝系を変換するためには、Ad4BP/SF-1の翻訳後修飾や複合体形成が関わると考えられる。そこで、これらの点について検討する。また、質量分析によって胎生期の雌雄生殖腺における代謝産物、ATP量などを測定する。 ③ 胎仔ライディッヒ細胞の分化メカニズム;これまでに胎仔ライディッヒ細胞特異的エンハンサーを用い、胎仔ライディッヒ細胞特異的にEGFPやCRE-ERT2を発現するマウスを準備してきた。これらのマウスから調製した胎仔ライディッヒ細胞を用い、胎仔期から成獣期に至る胎仔ライディッヒ細胞における遺伝子発現を検討する。 また、胎仔ライディッヒ細胞特異的にAd4BP/SF-1遺伝子をノックアウトすることが可能で、ノックアウト個体からは胎仔ライディッヒ細胞が消失する。出生後に消失させた場合には、精巣形成に異常をきたす。生後に存在する胎仔ライディッヒ細胞の機能を明らかにするため、これらのマウスの表現型を詳細に解析する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Glycolytic gene as the targets of nuclear receptor Ad4BP/SF-12014
Author(s)
Takashi Baba, Hiroyuki Otake, Tetsuya Sato, Kanako Miyabayashi, Yurina Shishido, Chia-Yih Wang, Yuichi Shima, Hiroshi Kimura, Mikako Yagi, Yasuhiro Ishihara, Shinjiro Hino, Hidesato Ogawa, Mitsuyoshi Nakao, Takeshi Yamazaki, Dongchon, Kang, Yasuyuki Ohkawa, Mikita Suyama, Bon-Chu Chung, Ken-ichirou Morohashi
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Journal Title
Nature Commun
Volume: 5
Pages: 3634
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Contribution of Leydig and Sertoli cells to testosterone production in mouse fetal testes2013
Author(s)
Yuichi Shima, Kanako Miyabayashi, Shogo Haraguchi, Tatsuhiko Arakawa, Hiroyuki Otake, Takashi Baba, Sawako Matsuzaki, Yurina Shishido, Haruhiko Akiyama, Taro Tachibana, Kazuyoshi Tsutsui, Ken-ichirou Morohashi
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Journal Title
Mol Endocrinol
Volume: 27
Pages: 63-73
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Homeoproteins Six1 and Six4 regulate male sex determination and mouse gonadal development2013
Author(s)
Yuka Fujimoto, Satomi S. Tanaka, Yasuka L. Yamaguchi, Hiroki Kobayashi, Shunsuke Kuroki, Makoto Tachibana, Mai Shinomura, Yoshiakira Kanai, Ken-ichirou Morohashi, Kiyoshi Kawakami, and Ryuichi Nishinakamura
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Journal Title
Dev Cell
Volume: 26
Pages: 416-430
Peer Reviewed
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