2012 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of sexual differentiation and maintenance of the gonad
Project Area | Molecular mechanisms for establishment of sex differences. |
Project/Area Number |
22132007
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
田中 実 基礎生物学研究所, 生殖遺伝学研究室, 准教授 (80202175)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 性分化 / 生殖腺 / メダカ / DNAメチル化 / 生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに野生型メダカ性分化の特定時期の胚から特定細胞のマイクロアレイ解析を行い、雌雄差のある遺伝子候補をいくつか見いだしていた。さらに解析をおし進め、そのいくつかで体細胞で性が決まる前の生殖細胞から発現に性差があることが in situ hybridization による解析で確認された。さらにキメラ解析などからその発現が体細胞によらないこと、また単離生殖細胞の培養実験から生殖細胞の増殖能にも性差がすでに存在していることが明らかになった。このことは身体全体の性が決まる前から生殖細胞には自律的に性差が獲得されていること示しており、脊椎動物で初めての興味深い結果を示すこととなった。 さらにhotei変異体を用いた解析からは、AMHシグナルが分裂過程にコミットした幹細胞様の生殖細胞の増殖を制御していることが明らかとなった。 また、FACS単離による少数細胞からcDNAをルーチンに合成してそれらを評価することが可能になり、質の良いcDNAから細胞の網羅的発現遺伝子同定を次世代シークエンサーを用いたRNAシークエンスにより開始した。発現の性差については計画研究の須山班と共同で解析を行い、有意に異なる遺伝子の同定とそれらが関与する細胞内での機能性差の解析に着手している。 一方でホルモンによる性分化の基礎過程を確認するために、特定細胞のゲノムメチル化状態に着目し解析を開始した。免疫組織化学法により、自己増殖型の生殖細胞(幹細胞様生殖細胞)のゲノムメチル化状態に性差があることが明らかとなり、薬理学的に阻害すると性が転換することが明らかになった。この性差を示す領域をゲノムワイドに詰める予備実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生殖細胞のDNA メチル化は、1型の幹細胞型生殖細胞において免疫染色レベルで性差が認められ、かつその生成を薬理学的に阻害するとこの時期の雌特有のII 型への以降が阻害されるなど、細胞レベルでの状況が明らかとなってきている。またメチル化領域の特定のための bisulfite 反応を行ったRNA シークエンスの条件も改善してきており、順調に推移していると言える。それだけでなく、エピゲノムレベルの解析生殖細胞の性の獲得に関して遺伝学的に次につながる予期せぬ結果が得られつつあるため、これを突き詰めるための実験も開始している。その意味では当初の予想を超えた展開になりつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞型生殖細胞のDNAメチル化が異なることを免疫染色やメチル化阻害の実験により明らかされてきたため、生殖細胞が蛍光で可視化されたトランスジェニックメダカを用い、雌雄の幹細胞型生殖細胞をFACS で単離し、そこから雌雄別にゲノムを抽出し bisulfite 反応を行うことを推し進める。次世代シークエンサーを用いることによりメチル化が異なる領域をゲノムレベルで網羅的に特定する。さらに、雌移行中の生殖細胞の遺伝子プロファイルを調べメチル化の程度との比較を行い、遺伝的制御を受けている座位の探索を継続する。
一方性ホルモン投与によるエピゲノムへの影響も引き続き調べる。まず性ホルモン投与により性転換メダカを得て、そこから投与群と非投与群のそれぞれの精子からゲノムを抽出し、上記と同様にメチル化状態をbisulfite シークエンスにより検出する。解析においてはバイオインフォマティクスのノウハウが大きく必要となるため、今まで以上に須山班と緊密に連携して行く予定である。このときの性比歪曲については、その解析結果によっては新たな遺伝学的手法を導入することを検討したい。また細胞レベルの解析では、生殖細胞やその周りの支持細胞が蛍光で可視化されたトランスジェニックメダカの生殖腺性分化過程を解析し、性転換を起こすときの遺伝子発現状態と細胞動態とを解析する。
上記2つの研究経過と結果とを総合的に比較検討し、研究の方向性を逐次決めていく。
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Research Products
(15 results)