2013 Fiscal Year Annual Research Report
がんの統合的ゲノム・エピゲノム解析と治療標的分子シーズの探索
Project Area | Integrative Systems Understanding of Cancer for Advanced Diagnosis, Therapy and Prevention |
Project/Area Number |
22134002
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小崎 健一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50270715)
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50568326)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | がん / 分子標的 / がん遺伝子 / がん抑制遺伝子 / システム生物学 / 遺伝子ネットワーク / ゲノム / エピゲノム |
Research Abstract |
がんの統合的ゲノム・エピゲノム解析と治療標的分子シーズ探索を目的に、がん幹細胞、上皮-間葉転換(EMT)制御異常、ならびに浸潤・転移に関する新規in vitro/in vivo実験モデル系を開発した。食道扁平上皮癌、口腔癌、大腸癌、子宮体癌などのがん腫を対象にゲノム・エピゲノム解析データを取得するとともに、腫瘍バンク、組織アレイ等の先端技術とバイオリソースを整備した。これらを基盤に次世代型シーケンサーとその応用 (ChIPシーケンス他)、メチル化DNAハイスループット解析を実施した。これにより得られたがんオミックス情報を基盤にシステム生物学的アプローチでがん特性の分子機序を解明し、がん個性診断バイオマーカーや分子標的治療薬シーズを探索した。当該年度は特にEMTに着目し、EMT抑制性マイクロ(mi)RNA探索のために、E-カドヘリン(CDH1)プロモーター活性を蛍光値として検出するin vitro機能的miRNAスクリーニング系を確立した。これを用いて470種類の合成二本鎖miRNAミミックの機能的スクリーニングを行い新規EMT抑制性miRNAとしてmiR-655を同定した。miR-655の直接標的遺伝子がTGFBR2、ZEB1であることを明らかにした。また、EMT制御性転写因子としてSIX1を同定し、ChIP-Seq法でSIX1標的遺伝子を網羅的に探索した。公開の大規模発現データとSIX1 ChIP-seqの統合的解析を通してSIX1標的遺伝子候補を選出した。さらに、種々病型のがん細胞株においてオートファジー活性の変調を調べ、がん細胞層別化および原因遺伝子異常を特定した。これによりオートファジー活性低下がん細胞特異的に細胞増殖抑制効果を示す化合物スクリーニング系を構築し、オートファジー活性を指標とするがん分子標的薬の候補探索に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
がん幹細胞、上皮-間葉転換(EMT)制御異常、ならびに浸潤・転移に関する新規in vitro/in vivo実験モデル系を開発した。これらと470種類の合成二本鎖miRNAのmicro RNAミミックRNAタイブラリー機能的探索において新規のEMTや細胞内酸化ストレスに制御等に関与するマイクとRNAを同定した。特に酸化ストレス応答性の転写因子NRF2の転写活性を指標としたレポーターシステムを用いたmiRNAライブラリースクリーニングにより、NRF2の転写活性を直接的に負に制御する4種のmiRNAs(miR-507, -634, -450a, -129-5p)を同定するとともに、NRF2変異、KEAP1変異、ならびにmiR-507, -634, -450a, -129-5pの発現低下をスコア化により食道扁平上皮がん予後予測が可能であることを示した。当初の計画以上の進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、マウスを用いたin vivo選択法により、好転移がん細胞株の樹立、さらに、種々の薬剤耐性化細胞株の樹立などが進んでおり、これらのがん悪性形質(がん特性)解析ツールを用いて、全ゲノムオミクス解析を進め、計算科学に支えられたシステム生物学的解析により、癌細胞の脆弱性や薬剤耐性に直接関わるシグナル伝達経路、ネットワークの抽出からがん特性を直接制御するハブ分子、摂動因子の同定を目指す。また、今回研究においてがん特性とオートファジー機構の関連が見出されてきており、合成致死性(synthetic lethality)に基づく抗がん創薬のスクリーニング系が立ち上がりつつある。
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Research Products
(35 results)