2011 Fiscal Year Annual Research Report
心臓興奮伝播ダイナミクスとその破綻による致死性不整脈発生機構の統合的解明
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
22136010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70262912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50178597)
神谷 香一郎 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50194973)
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Keywords | 心臓電気生理 / 不整脈 / 興奮伝播 / イオンチャネル / 光学マッピング / リエントリー / 活動電位 |
Research Abstract |
1.交感神経緊張亢進に伴う心室催不整脈作用 交感神経の緊張亢進は、心室細動・頻拍など致死性心室性不整脈の発生を促す。交感神経緊張に伴う心室催不整脈作用において、遅延整流K電流の活性化の遅い成分(IKs)増大がどのような役割を果たすかについて、ウサギ摘出心の活動電位光学マッピングにより検討した。薬物による選択的IKs遮断は、交感神経ベータ受容体刺激による心室筋活動電位持続時間(APD)の短縮を回復させた。また、IKs遮断は、ベータ受容体刺激下の心室筋に誘発したスパイラル・リエントリーの旋回中心の動態を不安定化し、リエントリーを早期に停止させた。活動電位波形解析では、IKs遮断によるAPD延長作用は、リエントリーの辺縁よりも中心部で著しく、このため、旋回中心の不安定化がもたらされることが明らかになった。活動電位数学モデルを用いたシミュレーション(中沢班との共同研究)においても動物実験と同様の効果が確認された。以上より、IKs遮断は、交感神経緊張に伴う心室不整脈に対して有効な治療戦略となる可能性が示唆された。 2.可逆的心筋冷却によるスパイラル・リエントリーの制御 心筋の軽度可逆的冷却は、活動電位持続時間や興奮伝導速度の回復特性を変化させて、心筋興奮の動的不安定性をもたらす。このような興奮波の動的不安定化を用いて、スパイラル・リエントリーの早期消滅を促す試みについて検討した。ウサギ摘出灌流心臓の心室筋の直径1cmの領域に可逆性の冷却を加えると(心筋局所冷却)、スパイラル・リエントリーの旋回中心が心臓の特定の部位に定在化することが妨げられ、リエントリーが早期に停止した。また、心筋局所冷却は、同様な機序により、DCショックによる除細動閾値を有意に低下させることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成22年度における心筋活動電位光学マッピングシステムの高機能化に予想外の時間を要したため、本装置を用いた本年度の研究に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
頻拍や細動が持続するメカニズムであるスパイラル・リエントリーに対して、イオンチャネル遮断や電気刺激がどのような効果を及ぼすかについて実験動物灌流心臓の光学マッピング実験で検討し、スパイラル・リエントリーの分裂を促進することなく、その旋回動態を不安定化させて、頻拍・細動の早期停止を促すための条件について探る。また、病態心における不整脈基質の形成について明らかにするため、心筋虚血や伸展刺激がtriggered activityや、スパイラル・リエントリーの発生・分裂を促す機序について、実験動物灌流心臓の光学マッピング実験で解析する。
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Research Products
(19 results)