2012 Fiscal Year Annual Research Report
Psychological bases of blame and judgment of responsibility among lay people: Empirical investigation and the development of methods for legal education.
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90261031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
膳場 百合子 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00548886)
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 准教授 (20367725)
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
松村 良之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (80091502)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 責任 / 懲罰 / 認知過程 / 規範 / 素朴理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.理論構築:哲学・倫理学などの分野における責任概念の整理を行った。責任の種類を整理する際の基準となる、いくつかの次元を特定するとともに、これに沿った責任内容の比較検討を行った。これと並行して、従来の社会心理学研究における責任概念モデルの変遷を概観し、その整理を行った。因果性の認知に基づく責任判断と、役割等に基くものとの区別など、実証的仮説の導出が可能ないくつかの理論モデルを比較検討した。 2.実証研究 ‐個人の責任と「組織風土」等の責任に関する調査として、交通違反行為のシナリオを題材にWeb調査の手法を用いた一般サンプル対象の調査を行った。 ‐ 命令的規範と記述的規範のいずれが発動されるかによって違反行為への許容度が変化することを実験的研究によって示した。また、内・外集団との所属関係が記述的規範の影響を左右することも示した。 ‐刑事事件のシナリオを用いて量刑判断に関する実験研究を行った。懲罰動機の根拠として、応報的公正判断に加えて、被告の人格特性に関する情報が重要な影響をもたらすことを示した。 3.法教育の実践をテーマとした実務家研修を主催して、研究知見の社会への還元・実装に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哲学、倫理学、法社会学などの規範論的分野と、社会心理学・文化心理学という実証分野のそれぞれにおいて、「責任」概念の整理を行う作業は、予定した以上に順調に進んでおり、並行して進めている実証研究はもちろん今後の進展にとっても有意義な基礎を提供することができている。 実証面では、刑事的事例を題材にとった懲罰動機と量刑判断に関する実験的研究、一般サンプルを対象とした調査研究、そして非・法的な規範意識に関する実験的検討という具合に幅広い問題領域をバランスよくカバーしながら、ほぼ順調に進捗しているといってよい。学会発表を主とした成果公表も順調である。 社会的還元として、法教育をテーマとした実務家研修を主催できたことも大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.理論構築においては、さらに概念の精緻化と体系的な議論を行うとともに、実証研究に直接結びつけられる具体的仮説の導出において一層の努力を図る。 2.実証研究では、引き続き刑事領域に重点を置いた実験題材の開発を進めて、懲罰動機や量刑判断の規定要因に関する詳細な議論を進める。特に、属人的要因が行為に関する責任追及に及ぼす影響を明らかにすることを重点課題とする。また、素朴法理解の文化的基盤を明らかにするための国際比較研究の計画を具体化させる予定である。加えて民事領域における素朴法理解の解明にも、徐々に考察の範囲を広げる。特に懲罰的意味を持った賠償のケースなどを事例に検討する。 3.さらに新たな研究テーマとして、個人の行為だけでなく「集団の行為」に対しても責任追及する心理的過程を吟味することを試みる。 4.前年度の実務家研修で得たネットワークをもとに、実務者との連携をさらに維持・発展させる。 5.研究代表者および研究分担者間相互の連携を一層強化する。プロジェクト研究会を継続し、知見の交換と新しいアイディアの開発を進める。
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