2014 Fiscal Year Annual Research Report
責任概念の素朴理解と非難を規定する心理過程の解明と法的概念の教育方法の考案
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90261031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
膳場 百合子 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00548886)
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 准教授 (20367725)
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
松村 良之 明治大学, 研究・知的戦略機構, 客員研究員 (80091502)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 責任認知 / 非難行動 / 素朴理論 / 文化 / 組織の責任 / 道徳と倫理 / 紛争解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
各班員の実証的研究においては、前年度までの成果に加えて、さらなる知見の蓄積を行うことに成功した。まず、全国の一般人を対象とした大規模調査の結果から、責任主義の素朴理解に関する実情が明らかになった。特に刑事事例に対する判断において結果責任主義へと世論が傾く傾向を見いだした点が重要である。また、企業などの組織に対する責任判断を調べる実験研究も進捗を示した。特に「組織の意思」に一致する行為・一致しない行為に対する非難と責任追及を調べたweb 調査実験は、組織と成員の関係性認知に基づく責任の素朴理解を明らかにした点に意義がある。他に集団間感情と紛争解決の過程についても実験研究を行った。 法の「コミュニケーション効果」に関する研究も進捗を示した。法制度への単純な注目が、直接的には関係の小さい領域における規範遵守行動にもたらす影響を調べる実験研究では、実験題材の開発と予備実験が進行している。責任追及と言語使用の関係を調べる実験研究も、予備実験を重ねることにより実験題材の洗練化を行うことができ、次年度に本格的な実験を実施するための準備が整った。 他の研究班との連携では、特に法教育班および量刑研究班との恊働が成果をあげている。 以上の諸研究活動を包括的に俯瞰するための理論的枠組みについても、応用倫理学の観点を取り入れながら作業をすすめることができた。その成果を、「責任と法意識の人間科学」といった標題のもとで書籍としてまとめ刊行する計画も進んでいる。 海外との共同研究については、米・カリフォルニア大学バークリー校、同・ハワイ大学、同・ New School for Social Research、イタリア・パドヴァ大学等の研究者(主に社会心理学者)との共同による実証研究の実施やシンポジウム開催が成果を生んでいる。特に素朴法意識の文化的基盤に関する検討において、今後の発展にも期待が持てる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論構築、実証的成果の蓄積の両面において、年度当初に計画していた課題がいずれもほぼ順調に進捗しているため。個別の仮説検証については、当初の予測と異なる実験結果を得ることがあるのは当然であるが、それに関する新たな観点からの解釈や、実験に用いる題材の改善などに有効につながっている。また、学際的交流と新たな研究アイディアの発見という点では、当初予想していた以上に有用な結果がもたらされたと考える。海外研究者との国際共同研究も、当初の予測を上回る数の研究プロジェクトがスタートしており、高い生産性を示しているといえる。最終年度に向けて、今後の研究課題を明確化する作業も、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
従来、各班員が個別に推進してきた実証研究テーマに関しては、さらなる発展を目指すとともに、助成の最終年度に向けてまとめの作業を開始する。また、一般人の素朴理解の特質を明らかにするために、法の専門教育を受けた人々との比較対照を行うための調査研究を試みる。加えて、国際共同研究の結果をもとに、素朴理解の文化的特質をいっそう明らかにすることを目指す。これらの研究における成果を俯瞰するための試みとして、班員および班外から招いた執筆者による研究書籍の刊行を行う。これは統合的な理論構築の成果を示す作業としても重要な意味を持つ。さらに、成果公表のための努力の一環として、ひき続き国際学会を中心に、学会報告等をさらに充実させる。
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Research Products
(15 results)