2014 Fiscal Year Annual Research Report
取調録画と裁判員裁判-取調べ過程の可視化をめぐる制度構築と裁判員裁判への影響
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101009
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 宏 鹿児島大学, 司法政策研究科, 教授 (00318685)
吉井 匡 香川大学, 法学部, 准教授 (20581507)
山田 直子 関西学院大学, 法学部, 教授 (70388726)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 可視化 / 取調べ / 録音録画 / 供述 / 障害者 / 少年 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)国際学術集会の開催 2014(平成26)年7月20日、立命館大学朱雀キャンパスにおいて、「取調べと可視化―新しい時代の取調べ技法・記録化と人間科学―」を開催した。企画とオーガナイズは当研究グループが担当、新学術領域「法と人間科学」全体の国際シンポジウムとして位置づけられ、立命館大学との共催により実施した。当研究グループ分担者は、各セッションの司会等を分担し、学術集会の成功に向けて貢献した。内容としては、韓国、オーストラリア、日本の刑訴法学者、心理学者がそれぞれ招待され、各国の取調べ録音録画制度(可視化)の現状や課題について、法学心理学の立場から報告をおこない、実務法曹のコメンテーターと指定討論者によるコメント、フロアとの質疑討議が丸一日をかけて実施され、日本において可視化をめぐって過去最大級の学術イベントとなった。100名以上が参加、マスコミでも報道されるなど大いに注目を集めた。その成果は既に日本語として公表されており、今後、英語での発信を準備中である。 (2)研究会開催 2014年(平成26)年12月5日、京都弁護士会において「知的障がい者等の取調べと可視化問題」と題して、京明・関西学院大学准教授を招いて研究会を開催し、立法に向けて進められている法制審議会答申において法制化されなかった、知的障がい者や少年といったいわゆる「供述弱者」と呼ばれる人たちの取調べに関わるルールや制度づくりについて討議した。 (3)国際発信 2014年11月には中国・西南民族大学で開催された被疑者取調べに関する国際研究集会に独英米の専門家と共に招聘され、日本の可視化や取調べ規制の現状について中国全土から集まった若手研究者にレクチャーをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)国際比較研究をめぐる進捗:上記実績報告にもあるように、国際学術集会の開催、成功によって、現時点での国際比較研究を進めることが十分に可能となった。今後、この項目については、上記集会の内容を英語で発信すること、海外学会での発表等も予定されており、新年度にほぼ目的を達成できると考える。 (2)法制度化をめぐる進捗:2015(平成27)年3月に、取調べの録音録画法制化を含む法案が閣議決定され、本年の通常国会でいよいよ可視化の制度設計が国会で議論されることになる。これを受けて、当研究グループは法案についての研究を進めており、公刊物等への発信を通じて、この項目についても十分な進展が期待されている。 (3)裁判員裁判との関係についての進捗:次年度、新学術領域全体として毎年実施されている模擬裁判をオーガナイズすることになっており、裁判員裁判と被疑者取調べの可視化実務がどのように有機的に関連するかについて一定の研究成果を獲得できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国際比較研究: 次年度は海外学会等において、当研究班の研究成果を発表し、海外における取調べに関する研究者や捜査実務に従事している法執行官、特にその指導者らからのフィードバックを得て、研究を更に洗練したものへと向上させる。また、当グループの分担者ではカヴァーできない法域、とりわけアジア圏との比較研究を進めるため、中国・台湾の実情について、グループ外からの協力を得て調査研究を進める。具体的には2015(平成27)年6月にメルボルンで開催される捜査取調べに関する国際研究集会に参加、報告し海外からのフィードバックを得る。同年7月に京都において被疑者取調べ録画研究会を開催し、鈴木賢・明治大学教授に台湾・中国の現状について報告いただく。また、同年8月に早稲田大学で開催される第四回東アジア法社会学会において、日韓中の三カ国に関する国際比較研究のセッションを持つ。 (2)可視化法制の研究: 平成27年度中に国会において被疑者取調べの可視化法案が成立の見込みであることから、法案審議過程における内容を精査すると共に、更なる改善改革の必要や、運用に向けて実務上必要と考えられる施策などについて研究を進める。 (3)裁判員裁判との関係についての研究: 平成27年度中に実施予定の模擬裁判を通して、裁判員裁判と取調べの録音録画制度の関連性を実証的に明らかにすると共に、適正な事実認定や自白の任意性判断に向けて何らかの専門的知見をまとめ、実務に還元できるよう研究を進める。
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Remarks |
(1)は、2014年7月20日に立命館大学を会場に開催した、新学術領域「法と人間科学」全体シンポジウムの内容を活字化したもの。本研究チームが、企画立案、招聘者交渉等のオーガナイズならびに当日の全セッションの司会等に中心的役割を果たした学術集会のオンライン版の記録である。
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Research Products
(9 results)