Research Abstract |
本研究で対象とするシンクロ型LPSO構造,特にMg基LPSOは軽量で且つ高い強度と延性を発現する.この優れた力学特性の発現メカニズムを研究し,LPSOによる新たな強化機構の確立を目指す.シンクロ型LPSO構造の特徴である同期した積層変調と濃度変調とが力学特性に与える寄与を,非シンクロ型LPSOとの特性比較により明らかにする.さらに,LPSOでの強化機構の要となるキンク帯の構造と形成過程を実験的に明らかにし,計算力学グループと連携してその階層的モデル化を図る.以上の研究で明らかとした強化機構と変形機構を,超高圧電顕法,中性子線回折によるその場観察で検証し,強化メカニズムの妥当性を実証する.今年度は,研究代表および各研究分担者,連携研究者が以前より扱ってきたMg系シンクロLPSO構造材料について,室温から高温に至る力学特性および変形特性を調査した.具体的には,まず,Mg-1at.%Zn-2at.%Y合金(二相合金),Mg-0.2at.%Zn-0.6at.%Y合金(α-Mg単相合金),Mg-5at.%Zn-7at.%Y(LPSO単相合金)各押出材について,600~673Kの高温域で押込みクリープを行った.これより,LPSO相が二相合金のクリープ強度に寄与していることを明らかにすると共に,673Kにおける各合金の変形時の押込み圧力と押込みひずみ速度の構成方程式を実験的に求め,それぞれの材料の応力指数を見積もった.また,一方向凝固させたLPSO単相合金擬単結晶は18R構造を持つが,これを熱処理して14Hとし,両者の力学特性を比較することで,構造変調の相違が力学特性に及ぼす影響を調べた.二種の構造を持つそれぞれのLPSO単相合金の降伏応力の温度依存性(図3)はほぼ同等となり,構造変調はマクロな力学特性に大きな影響を齎さないことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い,今年度は基礎的実験のための実験・解析手法の確立に務め,フレームワークを構築することができた.また,単結晶育成炉の導入やオペレータの確保等,領域全体の実験研究に貢献する技術の導入も併せて進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
LPSO単相合金とこれを含む複相合金について,室温から高温における力学特性や変形特性を引き続き調べていくと共に,LPSO相の変形モードの1つとして注目されているキンクについてその形成・発達過程やキンク近傍におけるひずみや結晶回転の様相を丹念に観察することでキンク変形の特徴を明らかにする.また,他グループとの連携もさらに強化していく.
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