2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動制御におけるHNK-1を中心としたN型糖鎖機能の解析
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡 昌吾 京都大学, 医学研究科, 教授 (60233300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 ナナ 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 部長 (20186167)
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Keywords | HNK-1糖鎖 / ガラクトース転移酵素 / グルクロン酸転移酵素 / グルタミン酸受容体 / N型糖鎖 |
Research Abstract |
今年度は主に以下の成果が得られた。 1)HNK-1糖鎖の発現制御機構の解析 HNK-1糖鎖発現は厳密にコントロールされており、その発現制御機構の解明はHNK-1糖鎖の機能を理解する上で重要となる。そこで本年度はHNK-1糖鎖の内部構造としてN-アセチルラクトサミン(Galβ-1-4GlcNAc)に着目して研究を行った。脳内ではいくつかのガラクトース転移酵素が存在するにもかかわらず、B4GalT2の遺伝子欠損マウスにおいて脳内でのHNK-1糖鎖がほとんど消失していることを明らかにした。そこで、何故B4GalT2の遺伝子欠損マウスでHNK-1糖鎖の消失が引き起こされるのかについて解析した結果、このB4GalT2が脳内でGlcAT-Pと分子複合体を形成していることが明らかとなった。またその相互作用は非常に特異的であり、B4GalTファミリー内で最も相同性の高いB4GalT1とは相互作用しないことも明らかとなった。以上の結果から、B4GalT2とGlcAT-Pとの特異的な分子複合体がHNK-1糖鎖合成に重要であると考えられた。 2)N型糖鎖によるシナプス可塑性の制御機構 AMPA受容体はGluA1~4のサブユニットからなるヘテロ四量体として存在し、シナプス後膜での量的変化がシナプス可塑性の調節に重要であると考えられている。そこで、今年度はAMPA受容体の主要な構成成分であるGluA1およびGluA2についてそのN型糖鎖付加部位に変異を加えた変異体を作製し、細胞表面発現量に関して解析を行った。その結果、GluA1のN末から1番目の糖鎖付加部位、4番目の糖鎖付加部位に変異を加えると細胞表面発現量が大きく減少することが明らかとなった。GluA2ではN末から2番目の糖鎖付加部位の変異により細胞表面発現量が減少した。従って、特定のGluA1やGluA2の特定のN型糖鎖が細胞発現調節に関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は神経可塑性や学習記憶に重要と考えられるHNK-1糖鎖とそれに関連する糖鎖が担う神経機能制御機構の解明を目的として、HNK-1糖鎖の生合成に関わる糖転移酵素遺伝子やその欠損マウスを用いて解析を進めている。本年度はHNK-1糖鎖の機能を考える上において重要な分子特異的なHNK-1糖鎖発現調節について生合成酵素複合体の関与の可能性を示す結果を得た。また、シナプス可塑性において重要な崩PA受容体のうちGluA1とGluA2について糖鎖付加部位変異体を作成し、特定のN型糖鎖が細胞表面癸現量調節に関与していることを示すことができた。しかし、全体構想として今後はHNK-1糖鎖を含めたN型糖鎖がどのような分子に認識され、細胞表面量を変化させているのかまた最終的にシナプス可塑性を調節しているのかを明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進んでいる研究については一層の推進をはかるとともに、遅れ気味である糖鎖を認識する分子の検索およびペリニューロナルネット(PNN)におけるHNK-1糖鎖の役割について解析を進める。糖鎖認識分子の探索はEMARS法と質量分析を組み合わせて進展させる。またPNNにおけるHNK-1糖鎖に関しては予備的な実験からプロテオグリカンの橋渡し4糖構造の宋端に存在するグルクロン酸がHNK-1STによって硫酸化されたものである可能性を示す結果を北川博士らと共同研究により得ている。この結果をさらに検証し、その機能解析を目指す。
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Research Products
(15 results)