2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
24102014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 一義 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 研究員 (90155119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笛野 博之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30212179)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 理論化学的シミュレーション / 分子構造 / 結晶軌道 / バンド構造 / 結晶軌道相 / 元素ブロックの反応性 / ヘテロ元素 / 分子設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究期間全体を通じて、本新学術領域研究における班内連携、他班との連携、さらに公募研究者との連携を視野に入れながら、元素ブロック高分子材料に対する理論化学的シミュレーション解析を行い、電子状態を始めとした必要な情報と知見を供することを本来の目的としている。具体的には、分子軌道計算及び結晶軌道計算を用いて本新学術領域研究において新規に開発されている興味深い物質群の基本的な電子状態の解析を行うとともに、電場、磁場、電磁場、力場、熱など種々の外場に応じてこれらの物質に現れる電子物性・機械物性、熱物性その他の機能の探索と予測により、元素ブロック高分子材料創製研究に対して理論面からの積極的な支援を行うことを目標としている。27年度も多方面にわたる支援を行うと同時に、下記の具体的な研究計画について達成することができた。 有機電界発光(EL)素子の発光機構としてS1→S0遷移とT1→S1→S0遷移すなわち熱活性型遅延蛍光 (TADF: Thermally Activated Delayed Fluorescence) を併用する発光を特に取り上げて、TADFを実現するために向けた、理論的な分子ブロック設計を行った。この設計にあたっては、逆項間交差(Reverse Intersystem Crossing: RISC)にあたるT1→S1遷移の速度定数の大きさはS1とT1間のエネルギー差が小さいほど大きくなることの利用、およびS1→S0遷移における蛍光発光の大きな速度定数の実現のために当該状態間の遷移双極子モーメントの絶対値を大きくすることの二点を指針とした。これらをもとに設計・合成した含窒素元素ブロックにおいて、S1発光波長540 nmで最大外部量子効率として従来の限界値(5~7.5 %)の2倍近い13.8 %を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
所属研究機関(京都大学)の情報メディアセンターにおけるスーパーコンピュータ、および27年度に購入設置した計算機等を駆使しながら、すでに方法論を確立した有機化学と無機化学を軸にした元素ブロックの電子状態に対する理論的解析を着実に進展させている。また新たな元素ブロックの反応性ならびに物性に関する理論的予測、結合様式に対する高度な知見を得ることにも成功している。 本研究代表者としての独自の研究(上記9の研究実績の概要参照のこと)を進展させる一方で、班内連携研究として(1)4配位結合様式を持つ13族元素を含有するヘテロフルオレン系分子における電子物性と特に3重項からの発光特性に関する研究、(2)含15族元素ポリマー(アザフェナレン系)における発光特性を中心とする電子物性の解析に関する研究や、さらに班間連携研究として(3) T8と称されるかご型オクタシルセスキオキサン(RSiO1.5)8:POSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)にビニルヘキサイソブチル置換基を導入した誘導体から成る元素ブロックの反応性に関わる電子状態解析、(4)特異な結合様式を持つトリフェニルアミン系元素ブロックの設計と合成に関する研究、および(5)アミノ基を含む新奇ペンタセン系元素ブロックの合成と電子物性解析に関する研究など、当初の計画以上に進展した研究を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、以下の2項目を中心としながらさらに広範囲の電子物性解析を推進する予定である。(1) 13族元素(B, Al, Ga, In等)、14族元素(Si, Ge, Sn等)、15族元素(N, P, As, Sb, Bi等)および16族元素(S, Se, Te等)を含む元素ブロック高分子材料の電子物性解析の手法を広く確立する。同時に適切なオリゴマーモデルを採用して、それらの電子物性・スピン物性・光物性等・熱電物性等の探索を目的としながら、開殻状態や励起状態の精密な記述方法による電子状態の検討も併せて行う。とくに新規な元素ブロック高分子の分子設計を積極的に行い、その電子状態ならびに発現が期待される電子物性に基づく材料設計を合成に先んじて行う。(2) 従来行ってきた班内・班間の共同研究にさらに注力するとともに、(i)界面自由エネルギーの微視的解析に基づく高分子の撥水性に関する理論的記述法の確立、(ii)高分子材料の熱膨張率の減少とエントロピー弾性の相関について解析するための理論的設計指針の確立、(iii)導電性高分子のバンドギャップ内準位の存在に基づく熱電発電能の向上に関する設計指針の確立などに関する研究を推進する。これらのための理論的研究は電子状態解析の幅を一層広げるものでもあり、積極的に推進する予定をしている。 なお28年度が最終年度であることにも鑑み、英文総説単行本など適切な形で研究成果をとりまとめ、世界的に発信することも計画している。
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Research Products
(7 results)