2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射性物質の大気沈着・拡散過程および陸面相互作用の理解
Project Area | Interdisciplinary Study on Environmental Transfer of Radionuclides from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident |
Project/Area Number |
24110003
|
Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
五十嵐 康人 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 室長 (90343897)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里村 雄彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20273435)
北 和之 茨城大学, 理学部, 教授 (30221914)
石塚 正秀 香川大学, 工学部, 准教授 (50324992)
吉田 尚弘 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60174942)
三上 正男 気象庁気象研究所, その他部局等, 研究総務官 (60354510)
大河内 博 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00241117)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 環境放射能 / 環境質定量化・予測 / 大気現象 / 環境変動 / 地球化学 / 福島第一原発事故 / 環境・生体影響 / 陸域生態圏 |
Research Abstract |
1)大気試料の組織的捕集と放射能分析:福島県浪江町津島の高線量率地域(津島地区)にてHV、LV、降水・降下塵サンプラーで観測を継続。HVサンプラーで日毎の試料を得た。分析は気象研、東工大で実施。さらにA04-08班の大阪大と連携し1700試料を分析。2)放射性エアロゾルの物理・化学・同位体性状と燃焼再飛散解明:茨城県つくば市で2011年3月に得たHVフィルターからIP計測で放射性粒子を抽出し、SEM-EDS等で性状を解明。粒子はFe, Zn, Cs等の元素から構成され、1~数μm径の球状で数BqのCs放射能とサブテラBq/gに達する高い比放射能をもつ。134/137Cs比はほぼ1で事故起源を示す。事故初期の放射性Csには微小で溶解性の高いものに加え、このような不溶性球状粒子もあったことが判明。公募班と連携し、同試料のSPring-8でのXRFイメージング分析で他のFP起源元素も検出。津島地区にてサルフェート、BC、粒径別重量濃度の観測を継続中。35Sの輸送、沈着に関するモデル評価を実施。フィルター試料の金属元素、燃焼指標有機物を分析しCsとの相関を解析。3)土壌再飛散の解明とエアロゾル大気質量分析:津島地区にて気象観測を継続。エアロゾルICP-質量分析を津島地区で1週間に亘り成功裡に実施。4)有機物・植物起源粒子による再飛散解明:フィルター試料のイオン成分、水溶性有機物、n-アルカンの分析を実施、Csとの相関につき統計解析を実施。5)放射性粒子の湿性沈着過程解明:球状Cs粒子の特性を組み込み、高解像度モデルによる沈着量計算を実施、従来のCsエアロゾルの仮定による計算結果と比較。6)再飛散過程モデル化と輸送・沈着モデルの高精度化:表土粒子飛散メカニズムを組み込んだ1D放射能飛散モデルを構築。一次放出の逆解析をさらに進め、高空間分解能の気象解析データの整備とアンサンブル計算を実施。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)「大気試料の組織的捕集と放射能分析」、2)「放射性エアロゾルの物理・化学・同位体性状の解明と燃焼再飛散の解明」、3)「土壌からの再飛散解明と大気質量分析による核種・元素分析」、5)「放射性粒子の湿性沈着過程解明」の各副課題については、観測・解析が全体として順調に進捗した。特に2)について、一次放出された放射性Csについて、従来から判明していたサブμm径で、サルフェートなど水溶性のエアロゾル態での放出に加え、球状で不溶性のCs粒子の存在が判明し、環境・生体内動態、除染、事故事象解明にインパクトを与える内容であり、重要な成果が得られ大きな進展があった。関連する研究発表も国際会議での発表が続いており、論文化も進行中である。他方、3)および4)「有機物,植物起源粒子による放射能再飛散解明」に係わり諸成分の分析が進みPMFといったソース・レセプタ解析で用いられる手法をも導入できたが、季節的に主要発生源が異なるなど現象の複雑さが判明したにとどまった。6)「再飛散過程モデル化と輸送・沈着モデルの高精度化」については、表土飛散メカニズムの一次元モデル化と再飛散の長期挙動予測への新規スキームの考案の努力が継続している。
|
Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、福島原発事故直後の一次放出粒子の性状解明につき、大きな成果を得た。他方、二次放出、すなわち一旦地表面に沈着した放射性核種が再度大気中に放出される過程については、現象が極めて複雑かつ、複数の発生源が存在することが改めて分かった。このため、副課題の構成を以下の通りあらため、観測・解析に支障なきように進捗管理を進める。1)試料組織的収集・放射能分析、2)一次放出、3)二次放出、①表土起源再飛散、有機物・植物起源再飛散、燃焼起源再飛散、②高時間分解能計測、4)大気モデルの精度向上・再飛散過程モデル化。 なお、福島県浪江町津島地区は依然として「帰還困難区域」であることから、許可等の事務手続きを適切に進め円滑に観測を実施する。また、5,6)「モデルの高精度化」につき担当者の里村京大教授が逝去されたことから、A01-01班から気象研梶野主任研究官を連携研究者とし、さらに班外に別の協力者も得つつ、対応可能とする。 より効率的な研究進捗を図るため、年度内複数回の班会議を開催し、特に不明点が多い二次放出に関する研究戦略の見直し等を随時行う。さらに、2014日本地球惑星科学連合大会など国内で開催される国際会議、その他の国内各学会への参加・発表を促進することで、論文発表を強く推進し、研究水準の底上げを図る。また、本新学術領域研究全体に関わる出版事業に参画して、広く国民へ成果を公開することに努めていく。なお、毎回の班会議には他研究班からの参加を必ず要請し実現しており、公募班との連携もさらに深まるように努力していく。 これに加えて、前年度から開始した若手育成事業を今年度も継続し、フィールド観測と実験室での電子顕微鏡観察を有機的に結んだプログラムを実施する。
|
Research Products
(61 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Re-suspension processes of radioactive cesium emitted by the FNDPP accident2013
Author(s)
Kazuyuki Kita, Misako Tanaka, Takeshi Kinase, Hiroyuki Demizu, Yasuhito Igarashi, Masao Mikami, Naohiro Yoshida,Sakae Toyoda, Keita Yamada, Atsushi Shinohara, Hiroto Kawashima, Yuichi Onda
Organizer
Japan Geoscience Union Meeting 2013
Place of Presentation
Makuhari, Chiba
Year and Date
20130519-20130524
-
-
[Presentation] Atmospheric-Terrestrial Interactions in Radioactive Pollution by the Fukushima Accident2013
Author(s)
Igarashi.Yasuhito, Kazuyuki Kita, Naohiro Yoshida, Keita Yamada, Masao Mikami, Kouji Adachi, Thomas Sekiyama,Takashi Maki, Taichu Tanaka, Yuji Zaizen, Masahide Ishizuka, Takehiko Satomura, Izumi Nakai, Yoshinari Abe, Kohei Nishiguchi, Keisuke Utani, Hiroto Kawashima, Yutaka Yamada, Yuko Hatano, Hiroshi Okochi
Organizer
Japan Geoscience Union Meeting 2013
Place of Presentation
Makuhari, Chiba
Year and Date
20130519-20130524
-
-
-
-
-
[Presentation] Variation of atmospheric concentrations of I-131, Cs-134 and Cs-137 observed over eastern Japan: contribution of leakage from Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant and secondary emission from soil and vegetation
Author(s)
Kazuyuki Kita, Rie Kasahara, Misako Tanaka, Kaori Sato, Hiroyuki Demizu, Yasuhito Igarashi, Masao Mikami, Naohiro Yoshida, Sakae Toyoda, Haruo Tsuruta, Mitsuo Uematsu, Shogo Hgaki, Atsushi Shinohara, Akira Watanabe, Hisao Nagabayashi, Akihiro Yokoyama, Masayuki Takigawa, Satoshi Sugawara, Kiesuke Sueki, Yuichi Onda
Organizer
European Geosciences Union General Assembly 2013
Place of Presentation
Vienna Austria
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-