2013 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期からのハイリスク児の臨床観察による発達障害理解と包括的診断法構築
Project Area | Constructive Developmental Science; Revealing the Principles of Development from Fetal Period and Systematic Understanding of Developmental Disorders |
Project/Area Number |
24119004
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小西 行郎 同志社大学, 心理学研究科, 教授 (40135588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三池 輝久 社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団兵庫県立リハビリテーション中央病院(子どもの, 診療部, 特命参与 (90040617)
松石 豊次郎 久留米大学, 医学部, 教授 (60157237)
日下 隆 香川大学, 医学部, 准教授 (50274288)
小西 郁生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90192062)
諸隈 誠一 九州大学, 環境発達医学研究センター, 特任准教授 (50380639)
船曳 康子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378744)
秦 利之 香川大学, 医学部, 教授 (20156334)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害 / 胎児 / サーカディアンリズム / 多様性 / ゆらぎ / 脳幹 / 表情 / 子宮内発育遅延児(IUGR) |
Research Abstract |
自閉症障害が体出生体重児、とりわけ子宮内発育遅延児(IUGR)に高頻度にみられることから、「原因となるできごとが胎児期にあり、それが胎動などに影響し、さらに出生後に発達障害を発生させる」というDoHAD仮説の観点を踏まえ、私たちは胎児期からの観察と調査により発達障害の発生メカニズムを明らかにする研究を立ち上げた。 まず、母体の栄養や子宮内の状態などの素因が、胎児の行動や心拍などの生理指標に与える影響を計測し、異常がみられた胎児が出生後にどのようにして発達障害児へと変化してゆくのかを継時的に観察する。それにより障害発生のメカニズムを解明し、包括的な診断方法を構築することを目的とする。生後の発達については、神経学的診察、視線計測による視聴覚認知機能の測定、発達テスト、さらに協調運動障害の有無などを定期的に行うためのプロトコールを完成させ、児童精神科的な診断方法と小児神経学的診断方法の融合を3歳児において実施すべく準備中である。 現在、胎児の行動観察は自発運動(GM)、心拍、口唇運動、呼吸様運動、眼球運動、表情などを記録して解析し、そのデータを基に胎動のシミュレーションを行っており、胎動と自己身体の認知の関係などを検討している。 胎児期から乳幼児期までの睡眠障害についても大規模な調査を実施しており、この調査の中から睡眠障害と発達障害とりわけ自閉症障害との関係を強く示唆する所見が得られ始めている。 また心拍変動と胎動との関係、生後の母子相互作用による引き込み現象時の脳血流の同期現象の測定や自閉症児の心拍変動、GMの異常と後の発達との関係あるいは脳機能画像についてもデータを採取し、さらなる検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三池らは自閉症児の心拍が定型発達児に比して明らかに多く、心拍の揺らぎが少ないことを見出した。諸隈はノンレム睡眠中の心拍の揺らぎの周波数と口唇運動のリズムの変化が一致することを論文で発表した。生後の児と母親の引き込み現象において脳血流を測定し、血流の同期が見られることを日下らが報告している。岩田らは生後のホルモン分泌に日内変動があることを突き止めた。また、新生児期のGMの解析によって、その多様性の欠如などの異常が3歳児の知的発達や脳性まひと関連があるとの結果を得た。この解析方法については公募班においてより簡便な方法が開発されている。 サーカディアンリズムについては出生前からでき始めていることが判明しており、胎児期にすでに睡眠障害と呼ぶべき状態もあることが示されている。ある保育園グループでの睡眠調査では、要治療と判断された睡眠障害が0歳児から5歳児までに約2%近く認められ、これらの児には問題行動も多く、睡眠障害と発達障害との関連を強く示唆している。 生後1ヶ月から成人まで、定期的に計測してきた視線計測に寄る視聴覚認知機能の診断については、6ヶ月から1歳までの児で100%通過する課題とそうでない課題があることが判明したため、通過する課題を組み合わせてアイトラッカーを用いた視聴覚認知のテストバッテリーを作ることが可能となる。 以上のことから胎児期以降の発達障害の発生メカニズムを考えるとき、胎児期の脳幹部を中心とした回路網にシステム障害のようなことが原因でリズムの揺らぎ、運動の多様性の障害などが発生し、出生後の環境との相互作用で発達障害が出現することが示唆された。 胎児期からのコホート研究は3施設で開始された。出生後についても、神経学的検査及び精神科的診断の時期および項目についての共通のプロトコールができており、コホート研究の準備はほぼ整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
コホートについては、ほぼ完成しているプロトコールに添って胎児期の栄養状態や妊婦の状態などを基礎データとして産婦人科より収集し、妊娠中の体重をもとに子宮内発育遅延児(IUGR)を選定する。 胎児期については3D超音波画像診断装置による胎児行動の記録と胎児心拍測定を行う。新生児期にはGMや表情の記録・観察を行い、神経学的診断も合わせて行う。出生後は継時的に視線計測による視聴覚認知機能の評価、およびベイリーによる発達テストを行い、あわせて発達性協調運動を評価する。1歳半からは児童精神科医がADOSを用いて発達障害の診断を行い、小児神経医の診断と比較検討する。 心拍の揺らぎについては、胎児期における母子間の揺らぎの同調、出生による同調の消失、さらには乳児期の引き込み現象による緩やかな心拍の同期などがわかっているが、同期現象のON/OFFが周産期に劇的に起こることが児に自己認知をさせるきっかけになると考えられることから、心拍の揺らぎに異常があると思われるIUGRで引き込み現象などが存在するかどうかを確かめつつ、同時に近赤外光(NIRS)によって脳血流の同期現象を母子同時測定で検証する。3歳頃の自閉症児についても同様の実験を行う。 運動の多様性については、引き続きGMの観察と評価法の改善を進め、その多様性の有無と発達障害との関連を明らかにする。さらに表情についても、その多様性を胎児やIUGRで検討し、のちの発達障害の発生との関係を見る、また、先天性の視覚障害、自閉症児を対象に、自然な状態の表情、意識的に作られた表情などを撮影し、分析する。先天的な視覚障害者は意識的に表情をつくることを苦手とするが、無意識には表情をつくることから、ある運動についてそれが意識的に、あるいは無意識的に起こるかどうかは重要な課題である。その切替えがどのようにして起こるかについても協調運動障害の評価の中で行う。
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Research Products
(82 results)