2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Innovative Materials Engineering Based on Biological Diversity |
Project/Area Number |
24120003
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大園 拓哉 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (40344030)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 悠司 千歳科学技術大学, 光科学部, 講師 (30598272)
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (40451439)
小林 元康 工学院大学, 工学部, 准教授 (50323176)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | トライボロジー / 自己組織化 / ゲル |
Research Abstract |
H25年度の計画は、弾性体であるウェットもしくはドライマテリアルの表面において、微細構造の作製、トライボロジー評価とその表面の化学修飾法の確立であった。これに対し、我々は以下のような検討を行い、次年度に繋がる成果を得た。 ①H24年度に確立していた、弾性体としてシリコーンゴム上に形成した、比較的大きな周期の表面座屈構造(リンクル)について、派生的な応用として光拡散機能を評価しスイッチング可能な光拡散装置(反射、透過)として利用できることが分かり、H24の特許出願に続き、論文発表を行った。この構造のトライボロジー試験を進め、摩擦力が凹凸構造の可変性によって20%程度変化出来ることがわかり、論文投稿中である。②自己組織化高分子微細突起構造を柔らかいゲル中に固定、ゲルを圧縮することで、マイクロスケールの突起構造とサブミリスケールのリンクル構造が組合わさった階層構造が形成されることを見出した。さらにリンクル構造はゲルを圧縮・解放することで可逆的に構造の形成を制御することができた(論文執筆中)。そのトライボロジー特性(耐性)も向上できると見込まれる。③均一な凹凸構造を有するハイドロゲルの作成法を確立し、任意にデザインした特徴的な表面構造を有するゲルの摩擦特性の評価を進め、凹凸構造のウェットトライボロジーへの影響を評価した。④水潤滑を発現する機能性分子として、側鎖にイオン性基および糖鎖構造を結合したビニルモノマーを合成した。これを表面開始重合に用いることで親水性ポリマーブラシの調製法を確立した。⑤新たな試みとして、生体(特に海洋の)における表面機能を調査するため、研究領域全般と連携し、海洋サンプリングを行い、表面構造観察やトライボロジー評価に資する試料を得る体制を整えた。 また、上記成果および、公になっていない研究内容の遂行に当り、班内外との連携も強めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ssH25年度は、可逆的に変形可能な微細構造を持つソフトマテリアル(北大・黒川)を自己組織化技術(千歳科学技術大・平井)と微小溝技術(産総研・大園)に基づき作製できることを確認、トライボロジー実験の初期結果を得、さらに材料の特性に合わせたナノメートルオーダーの表面の改質(工学院大学・小林)手法を確立し、H25年度計画である、弾性体であるウェットマテリアルの表面において、微細構造の作製とその表面の化学修飾法の調査、という観点から着実な成果が得られている。具体的には、①比較的大きい周期のリンクル構造のトライボロジー試験結果が得られ、②ハイドロゲルへの概念応用が可能な、自己組織化多孔膜に基づく構造強化したリンクル構造作製法を見出している。③ハイドロゲル表面へ作製した一般的な微細構造の摩擦特性への影響を評価することが進んでいる。④ウェット表面での利用を意識し、具体的な材料(PVA)表面での分子的表面改質方法を確立し、摩擦挙動の初期評価も終わっており、ハイドロゲル表面の化学改質への素地ができた。 上記①―③の成果は、ウェットマテリアルの表面への構造形成技術の多様性を示すものであり、本年度の目標を概ね達成しており、一部はそれ以外にも派生成果が得られている。また④では、具体的な表面改質法について検討がなされており、概ね目標を達成できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、可逆的に変形可能な微細構造を持つソフトマテリアル(北大・黒川)を自己組織化技術(東北大(現在千歳科学技術大)・平井)と微小溝技術(産総研・大園)に基づき多様に作製できることを見出し、トライボロジー評価を開始し、さらに材料の特性に合わせたナノメートルオーダーの表面の改質(九大(現在工学院大学)・小林)の具体的方法を確立した。H26年度は主に、作製した構造のトライボロジー評価を様々な状態に拡張し、その構造・可変性の相関を調査し、平行して新加入の野方氏(電中研)による海洋生物付着制御を試みる。以下に具体的な課題を述べる。 ●変形可能な微細構造の作製:特にトライボロジー評価に向けた、ハイドロゲル、エラストマーにおける構造作製のバリエーションを増やす。●上記の構造の接触状態や速度に依存したトライボロジー特性の評価。●表面化学修飾を施し上記構造上でのトライボロジー特性の評価。●海洋生物分泌物(ムチンなどの糖タンパク)をモチーフにした潤滑性高分子設計の検討。●上記構造の海洋付着生物の付着制御を検討する。●上記①②の構造以外でも、生物や自然にある可変構造を観察し、トライボロジーの評価(海洋フィールドワークによる採集作業も含め)などを通じ、実用機能へのデザインへ向けて理解を深める。●上記活動において班間連携に対しても積極的に行う。 これらの課題に取り組むことで、論文発表、学会発表、特許出願などへの具体的成果を目指す。
|
Research Products
(32 results)