2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
25104004
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 重彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70402758)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | 分子シミュレーション / 膜輸送体 / イオン結合タンパク質 / 光受容タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、分子シミュレーションを用いて、酵素分子や超分子の柔らかさがもたらす分子機能のメカニズムの理解を進めると共に、その知見に基づいた新規触媒活性を有する酵素分子や超分子の合理的設計を行う。平成 27 年度は、主に以下の研究を行った。リガンド結合により引き起こされる大局的タンパク質構造変化を予測する分子動力学(MD)法の新規手法であるLRPF法の開発、LRPF 法を用いたミトコンドリア ADP/ATP 輸送体の alternating access 機構の解明、及び Photo-active yellow protein(PYP)の機能に関わる水素結合に対するバルク水の効果の解析。 LRPF 法の開発では、リガンド結合などの局所的相互作用のみの情報を用いて、それによって引き起こされるタンパク質機能に関わる大域的構造変化を予測することを可能にする LRPF 法の開発を行った。実際に、開発された手法を用いて、カルモジュリンの N 端末ドメインのカルシウム結合に伴う大域的構造変化のシミュレーションを行ったところ、最終構造の正確な予測に成功した。 ADP/ATP 輸送体の alternating access 機構の解明では、上記の LRPF 法を用いて、OF 構造から IF 構造を予測することを試みた。その結果、RMSD が 9 A と非常に大きな構造変化であるものの、4 マイクロ秒にも渡る MD シミュレーションでも安定である IF 構造を得ることに成功した。また、IF 構造に選択的に結合することが知られている阻害剤の結合を MD シミュレーションにより検証し、本研究で得られた IF 構造が、選択的にリガンド結合をすることを明らかにした。 PYP の機能に関わるバルク水の効果の解析では、PYP の活性中心に存在する特徴的な水素結合を、QM/MM 法により解析した。その結果、水素結合様式はバルク水によるタンパク質電荷のスクリーニングに大きく影響を受けること、また、バルク水の活性中心への浸透により、低障壁水素結合が生成することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度で LRPF 法の開発が完了し、テスト系であるカルモジュリンの正確な構造変化の予測に成功している。さらに、その適用として、ADP/ATP 輸送体膜タンパク質に対して、alternating access後の予測構造に対して、非常に有望なモデルを得ることにも成功している。本手法の確立は、今後の柔らかなタンパク質構造変化の研究に対する大きな礎となることが期待される。また、PYP の研究では、本研究で用いている新規なハイブリッド QM/MM 計算により、機能に関わる水素結合を特徴付ける電子状態と、タンパク質内への水分子の移動が大きく関わることを初めて明らかにしており、前年度に解明した水溶性レチノール結合タンパク質の色変異体の吸収波長シフトの分子機構にも見られた、タンパク質機能に関わる水分子の移動と機能に関わる電子状態の顕著な相関の役割が明らかになりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
ADP/ATP 輸送体の成果を論文にまとめ発表する。また、本成果により、IF 構造の具体的な分子モデルが得られたことにより、本構造を作業仮説とした検証実験が可能となった。そこで、いくつかの変異体実験等を提案し、それに関する分子シミュレーションを行う。また、本年度は、上記の研究成果以外にも、チャネルロドプシンの光活性化過程、好熱菌ロドプシンの熱安定性機構、シトクロム c の酸化還元過程、及び柔軟な機能性有機分子に関する研究が大きく進捗しており、今後はそれらの研究も推進する。
|
-
[Journal Article] Atomistic design of microbial opsin-based blue-shifted optogenetics tools2015
Author(s)
Hideaki E. Kato, Motoshi Kamiya, Seiya Sugo, Jumpei Ito, Reiya Taniguchi, Ayaka Orito, Kunio Hirata, Ayumu Inutsuka, Akihiro Yamanaka, Andres D. Maturana, Ryuichiro Ishitani, Yuki Sudo, Shigehiko Hayashi, and Osamu Nureki
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: 6
Pages: 7177
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-